アクセス解析の活用が上手くいかない9つの理由

アクセス解析が上手くいかない9つの理由」というタイトルが分かりづらいという指摘を頂いたので改題(2009/04/12)
アクセス解析を導入。自分が計測したいようにタグを入れて解析開始。これで上手くいくぞ!


…って、そんなに簡単にいかないよね。


アクセス解析の導入や運用に関わった人なら、その難しさに共感してくれると思います。


何故、せっかく苦労して選んで導入したアクセス解析が上手くいかないのだろうか?
アクセス解析を中心としたPDCAによるサイト改善や最適化を夢見るも、1年後思ったようにいかないのだろうか?
アクセス解析ベンダー必見。導入した後になぜ思ったように活用されないのか、をまとめてみました。

Metrics InsiderのWhy Web Analytics Tools Failに記載されている理由5つ+自分が感じている理由4つを追加してこの記事は書いています。



1)ビジネスニーズや技術にあった解析ができない。

昔のHTMLだけの時代から、サイトのコンテンツを表示する方法と箇所が大きく進化しています。AjaxFlash、動画計測、ソーシャルメディアRSSのうちどれか(あるいは複数の技術を使っているサイトが多いと思います。多くのアクセス解析ツールはこれらの計測に対応していません。また対応していても、簡単に計測する事ができません。

ビジネス上必要なデータをとれない場合は、新しいツールの検討を開始いたします。他にもサイトの規模とアクセス解析ツールの規模があわなかった(どちらかが大きすぎたというケース)などもこの中に入ります。

2)社内教育が上手くいかない

多くの無料ツールなどはトレーニングのサービスや情報が少なかったりします。そのため個人に依存する事が多く、その人が辞めたりすると引き継ぎがきちんと行われない限り、継続してツールを利用する事が難しくなります。特にこういったツールは思いを持っていないと、定常レポート以外はなかなか学ぼう・活用しようという気持ちになりません。人に依存せず、会社として教育を担保しない限りは、アクセス解析ツールの真価を発揮できなくなります。

このような教育が行われないと、ツールがあまり使われなくなり、結果「そのツールが使えないツール」という烙印を押されてしまいます。

3)適材適所なリソースが足りない

上記と若干似ていますが、教育プログラムがちゃんと作られたとしても、リソースが足りないと中途半端なデータしか取得できなくなります。よくあるのが、データを取得して傾向を見つけることは出来る。だけど、そこからサイトを改善するための案を考える人がいなかったり、それを反映させる人がいないということです。

いわゆるPDCAサイクルの後半が回っていない状態ですね。これも使えないツールという烙印を押される原因になってしまいます。

4)データがまとまりすぎて、やりたい事ができない

アクセス解析ツールは、合計のデータを出してくれるが、特定の特徴や行動を起こした人が、どうサイトでふるまっているのか?というのを把握するのが非常に難しいです。

改善のプランとして定番なのが「こういった人に向けたこういった施策をしたい」「こういった人たちのコンバージョンをあげたい」といったターゲッティングによる改善を行いたい場合がありますが、多くのアクセス解析ツールはそのための情報を簡単に取得する事ができません。あるいは複数ツールを組み合わせないと実現ができません。

5)複雑かつ難しい

アクセス解析ツールを正しく使うためには、正しく設計をして実装する必要があります。しかし、それを的確に会社内の全てのサイトで実現するのは非常に難しいプロセスです。多くの検討・仕様確認・調整が必要になります。ましてや他のデータの連携などしようと思うと、2年〜3年かかってもおかしくないでしょう。多くの企業はアクセス解析に対して行った投資の成果を見たいのですが、2〜3年もまつことは出来ません。

すると「すぐに改善できるものを見せよう」という形になり、ますます本来やりたかった事に時間がかかったりします。アクセス解析の効果を実感するには、時間と人材育成と辛抱が必要なのですが、そこまで待てずにアクセス解析を諦めてしまう企業も多くいます。あるポータルサイトの社長も言っていたようですが、「アクセス解析担当者はそのグループに一番優秀な人に担当させろ」という言葉に私も同意します。それだけ、スキルと熱意と社内調整力がいる仕事です。

6)重要性が認知されていない

社内のIT部門あるいはサイト制作部門にその重要性が理解されていないというのもよくある話です。マーケティング部門が「サイトを立ち上げるならアクセス解析は当たり前だ」という気持ちがあっても、それを理解してもらうのは難しいケースもあります。本当にアクセス解析を入れることで良いことがあるのか?費用対効果は?と聞かれると、回答に困っていませんか?その重要性であったり意義を、多くの人に共感してもらう必要があります。

アクセス解析は技術やサイト構造と密接に連携しています。より高度な分析を行おうとすると、その親和性はますます重要になります。一緒に働く人たち・協力してもらう人たちに共感をしてもらわないと、協動ができません。協働出来ないと重要性と優先度が下がり、やりたい事を実現できなかったり、時間がかかるようになってしまいます。

7)ベンダーのサポートやサービスが足りない

アクセス解析ツールそのものより大切なのが、サポートやサービスの品質になります。特に企業が大きくなればなるほど、この部分が想定以上に重要になってきます。問い合わせの回答スピードや品質、どれくらい安定的にデータを取得できるか、どこまでを保障してくれるか?またこれをどう契約に盛り込めるか?など導入してから発見する部分は非常におおいです。

このレベルが一定以上ないと、内部工数が大きくふえたり、運用そのものが回らなくなるリスクがあります。ほかの項目でも出てきましたが、期待と現実をしっかりあわせるための事前調査は重要です。アクセス解析の選定には関しては、また将来記事を書きます。

8)分析を運用を行う事が会社での評価につながらない

2)社内教育が上手くいかない や 3)適材適所なリソースが足りない ともからんできますが、アクセス解析の仕事はかなり「日陰」な仕事です。サイトのデザインやキャンペーンなどと違い、地道な検証と繰り返しが成果を呼ぶものです。また「アクセス解析を見て分析しているだけ」ではサイト改善につながらず、打ち手に落とす必要があります。

たいていの場合、分析する人と打ち手を打つ人は違ったりします。こういったケースの場合、分析する人は評価がされずらかったりします。この人の成果や貢献を可視化できる仕組みを用意しないと、モチベーションが維持されないし、やる気も起きなくなります。

9)特性が理解されていない

アクセス解析ツールは100%の精度を持っているわけではありません。タグ型であればJavaScriptが動作しないPCであったり、読み込まれる前にページを遷移されてしまったら計測ができません。他のデータ(広告出稿先からのデータ・生ログデータ・OvertureやAdwordsのデータ・受注データのDB)と数字が完全に一致する事もありません。定義が違ったり、特性がある事を理解していないと「うちがもっている数字とあわない!アクセス解析の数値はおかしいのでは?使えないのでは?」という判断が入りがちです。

違って当たり前であること、それらを揃えるには、定義もあわせたり、いろいろな紐付けをしたり、各種データの一元化をするなど設計も実装も大変な作業が待っています。大半の企業はここまで出来ないので、性質を理解した上で正しく利用しないと、使えないツールだと思われてしまいます。


まとめ

これだけいろいろあると、「アクセス解析って大変だ!」と思う方もいるでしょう。実際に大変です。しかし、そんなに悲観する必要ありません。これらの多くは、導入前に正しい世界を描く事(期待値調整も含め)、それを多くの人に理解してもらい協力を得られる体制を作ることで解決されます。まぁ、こうやってさらっと1行で書いていますが、それ自体が簡単ではないことは重々承知です。


だけど、アクセス解析に携わっている多くの人(少なくともこのブログを見ている人 笑)にとっては、アクセス解析が必須かつ重要な物だと認識していると思います。今回はアクセス解析が上手くいかない理由という記事でしたが、どうやったら上手くいくのか?も改めて考えてみたいと思います。導入されている方はどうやって会社内でアクセス解析を導入させましたか?導入しようとしている方はどうやって導入させようとしていますか?


今回書いた9個の事をすぐにすべて解決するのは難しいです。しかし、あなたの会社にとってどれが「一番大きそうな課題か?」それを「いつ頃どうやって解決しようと考えているか?」という事は意識したほうが、アクセス解析の導入と活用が上手くいくかと思います。