Google Analytics Premiumに関する短期連載になります。全3回を予定しております。今回はGoogle Analytics Premiumの独自レポートである「アトリビューションレポート」を紹介いたします。
※2012/04/22時点の、Google Analytics Premiumに関する公式ヘルプやドキュメントなどの情報を元に作成しています。
Google AnalyticsのAttribution Playbook より
4月17日公開 Google Analytics Premium 短期連載(1):「Google Analytics」そして「SiteCatalyst」との仕様や機能比較
4月23日公開 Google Analytics Premium 短期連載(2):独自レポート「アトリビューションレポート」の機能を紹介
4月27日公開 Google Analytics Premium 短期連載(3):筆者が考えるPremiumとその周辺に関連する6の疑問への回答
「アトリビューション」とは
まず、アトリビューションについて簡単にふれておきます。アトリビューションとは寄与あるいは分配を意味し、アクセス解析界隈では「成果の流入元分析と配分」という観点で良く利用されています。例えば、ある人がウェブサイトに1回目はリスティングで訪れ、2回目はメールマガジンで訪れ、3回目は自然検索で訪れた成果を達成したとしましょう。その時に多くのアクセス解析ツールでは、成果の貢献を、直接成果に結びついた「自然検索」のみで評価をしていました。これに対して、他の流入元にも一定の評価を与えても良いのではないか?という考え方になります。
より詳しい内容を理解されたい方は、「アトリビューション分析」連載 その1:アトリビューションとは?をご覧ください。
Google Analyticsにおけるアトリビューション分析
さて、そんなアトリビューション分析ですが、Google Analyticsでは昨年から「マルチチャネル」というレポート群が用意されています。
「マルチチャネル」のなかの「アシストコンバージョン」レポート
こちらのレポート群では、流入施策ごとにコンバージョンした訪問者の「初回流入」「アシスト流入」「最終流入」数や経路を分析することが出来ます。
しかし、あくまでも用意されたルールでのレポートしか見ることができません。したがって、最初と最後の流入に貢献の重み付けをおいた場合は、どれくらいの売上に貢献をしているか?といった分析を行なうことができません。様々な分配ルールで効果を確認するために、「マルチチャネル」内に用意されたのが「アトリビューションレポート」になります。
マルチチャネルの機能や活用方法に関してはGoogle アナリティクスの新機能「マルチチャネル」 5つのレポートとその活用方法を紹介!(前編)をご覧ください。
Google Analytics Premiumの「アトリビューション」レポート
さて、ここから本編になります。Google Analytics Premiumのアトリビューションレポートでは、デフォルトで5つの分配モデルが用意されています。
Google AnalyticsのAttribution Playbook より
それぞれを確認してみましょう。
1.最終配分
成果に直接貢献した流入元に評価を100%割り当てるモデルです。今までのセッションベースの考え方になり、すべての基本です。
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目(成果) |
0% | 0% | 0% | 0% | 100% |
3.均等配分
成果に辿り着いた人の全ての流入に対して同じ割合だけ評価を割り当てます。5回流入してコンバージョンした場合は、20%ずつ割り当てられます。
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目(成果) |
20% | 20% | 20% | 20% | 20% |
4.時間減衰配分
成果を達成した時間と流入日時の差分を元に評価を割り当てます。そのため成果に近い流入ほど貢献の割合が高くなります。*2
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目(成果) |
5% | 15% | 20% | 25% | 35% |
5.初回&最終流入重視配分
初回と成果に直接繋がった流入の評価の割合が高くなるモデルです。「知ったきっかけ」と「コンバージョンが実現した」流入の2つに貢献を割り当てます。具体的には初回及び最終に40%、残りの流入で20%をわけあう形となります*3。
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目(成果) |
40% | 6.66% | 6.66% | 6.66% | 40% |
確認出来るレポート
以下のようなレポートを確認することが可能です。
Google AnalyticsのAttribution Playbook より
左側から「チャネル」「最終配分」「初回配分」「最終配分との差(初回配分)の場合」と4つの列があります。
最も左の「チャネル」は「マルチチャネル」の他のレポートでも見られる、流入元の分類になります。ここでは大きな分類で表示されていますが、キーワードや参照元ドメインといった単位で確認する事が可能です。「最終配分」と「初回配分」では、これらのルールだった場合のチャネル別貢献数が表示されています。最大で3つのモデルを横並びで比較出来るようです。ここでは「コンバージョン数」になっていますが、売上を取得している場合は、売上での比較も出来るようです。
そしてもっとも右にある列は、「最終配分」と「初回配分」の差分になります。この差が大きければ大きいほど、モデルによる効果の違いが大きいということになります。上記画像の2行目を確認してみると「-15.54%」とありますが、これは「初回配分」のモデルの場合、「直接流入(ノーリファラー)」の貢献は15.54%減少するということを意味します。施策でこのギャップが大きいところを見て、流入施策の特性を確認することが大切です。
カスタマイズモデル
「アトリビューションレポート」の最も大きな特徴は、自分で配分モデルをカスタマイズできることにあります。ルールを作成して保存することで、そのサイト固有の配分モデルを作成することができます。レポートにもすぐ反映される、とっても強力な機能です。その中身を見てみましょう。
Google AnalyticsのAttribution Playbook より
作成方法ですが、まずは先程紹介した5つのモデルからベースとなるモデルを選択します。その後に、条件付けを行なっていきます。条件付けは「●●●という条件の場合、貢献の度合いを他と比較して▲倍にする」といった形で複数設定することができます。例えば、「(指定した文字列が含まれるワード)の場合は、貢献を0.5倍にする」といった形です。では、どのような条件が使えるかを確認してみましょう。
流入回数
「最初」「最終」「X回目」といった流入回数に応じて重み付けをする事が可能です
サイト内での行動
「直帰(以外)」「何ページ以上(未満)閲覧」「何分以上(未満)閲覧」といったサイト内での行動を条件に重み付けが可能です。直帰した場合は貢献として数えないといった形は納得感があるかと思います。
時間減衰
時間における配分モデルをカスタマイズすることで、成果からの時間を元に評価の割合を変更することができます。
ここで紹介した条件は一部になります。これら条件をORやANDで組み合わせることも出来るので、様々なモデルを作成して比較することが出来るのではないでしょうか。
感想&まとめ
アトリビューションという観点で分析出来る解析ツールはいくつかあります。Google Analyticsはもちろんのこと、SiteCatalystやCoreMetricsなども機能として用意されています。しかし、貢献を自由にカスタマイズし、簡単に比較出来るのは私が知るかぎりではPremiumだけです。
私がこのレポートを活用するとすれば、まずは仮説を元に様々なモデルを作成してみます。複数モデルを元に、どのモデルも貢献がある/貢献がない流入元を見つけ、その中で施策が打てる(=量を増やせる/量を減らせる)ものがあれば、実際に増やす/減らすを行なってみます。そして、実施してから数週間後・1ヶ月後でも想定通りの結果が出たかを確認します。
この時に大切なのは複数のモデルの結果を常にダウンロードし、比較し続けることです。サイト共通の最適な配分モデルがあるかもしれないですし、流入元ごとに最適なモデルが違うかもしれません。常に数値を確認しながら、最もサイト/流入元にとって実態を反映するモデルを選びましょう。
しかし、このような機能が用意されると、やはり次に欲しいのは「予測機能」になりますね。例えば、アトリビューションのレポートを元に特定の施策の「流入を2倍」に増やし場合、1ヶ月後のコンバージョン数にどれくらいの影響をあたえるのか?といった情報です。モデルによって想定される効果は当然変わってくるので、こちらも複数のモデルを横並びで比較したくなります。
ニーズは高いかと思うので、個人的には実装されてもおかしくない機能だと考えております。Googleに期待したいところです!
最後にGoogle Analyticsの Attribution Playbookに記載されていた「成功のためのチェックリスト」を紹介して終わります。どれも大切な考え方なので、アトリビューションに興味がある方、あるいは、携わっている方はぜひ確認しておきましょう!
1.比較してカスタマイズしよう
単一のモデルでは説明がつかない場合がほとんどです。ビジネスにあわせて様々な(カスタム)モデルを比較しましょう。実施するキャンペーンの種類によってもモデルは変わります*4
2.実験して繰り返そう
様々なモデルを見る中で新たな気づきがあったら、それを検証するために様々なキャンペーンやマーケティング施策を実施し、数値にどのような影響があるかを確認しましょう。そしてそれを繰り返して行きましょう。「自分の仮説」だけを証明するモデルを見るのではなく、様々なモデルで比較する事を忘れないようにしましょう。
3.常識によるチェック&補正しよう
オンラインで取得出来る情報は限られています。マルチデバイスの効果やオフラインでの売上はこのアトリビューションのレポートには組み込まれていません。分析あるいは評価する際にはこれらの点にも考慮しておきましょう。
5.限界を理解しよう
アトリビューションは全ての疑問に答えてくれません。自分の仮説とモデルの結果が正反対でどちらを信じれ良いか分からない場合は、テストを行なう あるいは マーケット調査などを行なうことで、判断の精度をあげていきましょう。
6.機会を捉えよう
アトリビューションの考え方は、全体を見渡せるほど完璧ではないものの、最終配分よりは強力です。不完全である事を理解しながらも、ぜひこれを機会と捉えて、実験を進めてみましょう。
というわけで、第2回は以上になります。次回が最終回です。Q&A形式で進めていきたいと思います!
4月17日公開 Google Analytics Premium 短期連載(1):「Google Analytics」そして「SiteCatalyst」との仕様や機能比較
4月23日公開 Google Analytics Premium 短期連載(2):独自レポート「アトリビューションレポート」の機能を紹介
4月27日公開 Google Analytics Premium 短期連載(3):筆者が考えるPremiumとその周辺に関連する6の疑問への回答