ソシャゲ分析講座 基本編(その9):「カード」と「ガチャ」を理解する(前編)

最近は業務で、ソーシャルゲームの分析&改善施策の提案を行っています。そこで、本ブログではミニ連載という形で、ソーシャルゲームの分析手法について紹介をしていきます。全10回を予定しております。

■過去の連載記事
ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その2):「DAU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その3):「継続率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その4):「スペンド率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その5):「ARPPU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その6):「4つのステージとKPI」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その7):「イベントの分析」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その8):「イベントの分析」を理解する(後編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その9):「カード」と「ガチャ」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その10):「カード」と「ガチャ」を理解する(後編)


Amebaのソーシャルゲーム「三国志パズル大戦

ガチャとは?

ガチャとはランダムな箱に入っている商品(通常はカード)を引いて入手をするための仕組みです。元々は「ガチャガチャ」あるいは「ガチャポン」と呼ばれる機械が名称の元になっています。こちらも同じように引いて商品を入手する仕組みです。


ガチャポンの機械


さて、ガチャの事を理解する前に、その中に入っている商品である「カード」の事もあわせて理解しておく必要があります。


カードとは?

カードとはゲーム内で使う分身と読んでもよいでしょう。カードを複数枚集めてチーム(=デッキ)を作り、そのデッキを使ってゲーム内の敵あるいは他のプレイヤーと対戦するために利用します。カード形式である必要な無く、パズル&ドラゴンであれば「モンスター」になっています。いずれにせよ、強いカードを入手することがゲームを進める上で、あるいは相手に勝つ上で非常に大切になってきます。その強いカードを入手するために、ガチャを引きます。


では、「強いカード」とはどういう風に決まっているのでしょうか?これに関してはいくつかの要素があります。大きく分けると「レアリティ」「コスト」「パラメータ」「スキル」の4つになります。それぞれを簡単に確認してみましょう。

レアリティとは

カードの希少価値を表したものです。希少価値が高いものほど、入手するのが難しい(=確率が低い=入手にお金がかかる)けど強いかつイラストが豪華という形になります。

例えば上記のカードであれば左上に書いてある「SS」というのがレアリティになります。レアリティの表記に関しては、サービスによって違うことも多いのですが、一般的には以下の様な上下関係になっています


ノーマル(N)<ハイノーマル(HN)<レア(R)<ハイレア(HR)<スペシャルレア(SR)<スーパースペシャルレア(SSRあるいはSS)<レジエンド(L)

※それぞれに「N」「N+」といった形でプラスの有無で更に細分化することも多いです。

レアリティはカードの強さを利用者に理解してもらう上では最も分かりやすい項目となっています。

コスト

カードゲームでは複数のカードを元に「デッキ」を作り、そのデッキで対戦をしたりします。例えばカードを5つ利用出来るサービスだとしましょう。この時に自由に5枚のカードを選べるわけではありません。デッキには「コスト上限」という物があり、そのコストを越えるデッキを作成することができません。

例えば以下のカードはコストが「6」と書いています

自分のデッキのコスト上限が「20」であれば、同じコスト6のカードを5つ入れることが出来ません(30>20となるため)。このコスト上限は(多くのゲームでは)自分のレベルが上がると増えていきます。パズドラなど一部のゲームではコストの概念は入っていません(2014/06/27 すいません、コストの概念ありましたね)。コストは、レアリティの中で更に強さの差をつけるために利用されています。例えば同じハイレアでも、コスト5とコスト7では強さ(後述するパラメータ参照)が変わってきます。

パラメータ

カードに紐付いた強さをあらわす値です。多くのカードゲームでは「攻撃力」や「防御力」などが設定されています。攻撃力が高いほど相手に与えるダメージが多く、防御力が高いほど相手からうけるダメージを減らすことができます。

同じレアリティやコストのカードでも、攻撃が高い、防御が高い、バランスが取れているなどの特徴があります。

スキル

カードが使える固有の能力です。ゲームによってその内容は大きく変わってきます。自分達のカードの攻撃力や防御力をあげたり、必ず最初に攻撃出来たり、特定量のダメージを与えたりなどがあります。パラメータが少し低くても、スキルが強いからデッキに入れるといった使い方も出来、戦略に影響を与える要素となっています。

「声援」の部分がスキルに値します

ガチャでカードを入手する

カードを入手するための一つの方法がガチャになります(他にも得点やランキング報酬なのでもらうことができます)。ガチャには複数枚のカードが入っており、その中からカードを引いて、出てきたカードを入手します。ガチャには主に無料と有料のものがあります。基本的には有料のもののほうが良いカードを入手することができます(=レアリティが高いカードが入っている)。

カードに関してはそれぞれ「確率」が設定されており、基本的にはレアリティが高いほど出現する確率が低くなります。有料ガチャに関しては「レアリティ≠カード)」に応じて出現率を明記する必要があります。また、このような有料ガチャで、複数種類のカードを集めた時に特定のカードが更に貰えるあるいは何かしらの特典を入手出来るというものに関しては禁止されています(いわゆる「コンプガチャ問題」というやつです)

確率などに関しては次回に譲ります。ここではどのようなガチャの種類があるかを簡単に紹介いたします。現在、多種多様なガチャがあり、全てを紹介する事は出来ません。しかし、基本的には以下の5つに集約され、残りはそれらの組み合わせあるいは派生といえます。では、それぞれを確認してみましょう

1,通常ガチャ

1回X円(多くのカードゲームは200円〜400円の間)で1枚のカードを引けるという基本的な仕組みのガチャです。どのカードゲームのガチャにも用意されているものです。サービスによっては初回だけ安くしたりといったこともあります。

なお、無料のものは「ガチャ」あるいは「通常ガチャ」と呼び、有料のものは(レア以上しか出ない場合は)「レアガチャ」などと呼ぶこともあります

2,X連ガチャ

10連ガチャといった形で、1回で10枚のカードが手に入るガチャなどを指します。1回200円のガチャであれば、10連ガチャは2000円となります。そのままですと、通常ガチャを回したほうが良さそうですが(1枚目で欲しいカードが入手できる可能性もあるので)、以下のような特典をつける事があります。

1:値段が少し安くなっている(2000円ではなく1600円など)
2:10個の値段で12回回せる(2000円で10回ではなく11回)
3:特定のレアリティやカードが入手出来る(10連を回したら、SRが1枚以上確定など)

何かしらお得なので、通常ガチャよりは回しやすくなるのですが、当然それぞれ回すときの金額が違うので、ARPPUが変わってきます。


3.ステップアップガチャ

回すごとに値段と特典が増えていくガチャの仕組みです。

上記の画像のように、1枚あたりの金額が安くなったり、特定のレアリティが確定したりといった形になります。引けば引くほどお得なので、はじめてしまうと、最後まで引かないとという気持ちにさせるガチャの仕組みです。

4.(ランダム)ポイントアップガチャ

ガチャをまわすたびにポイントが貰え、そのポイントで別のカードを入手出来るといった形です。

画像を見ていただいたほうがわかりやすいがですが、10連ガチャを回すとポイントがたまり、そのポイントで各種アイテムやカードと交換したり、ガチャの確率が上がったりします。積み上がっていく方式なので、欲しいカードなどがある場合は、大体いくらで入手出来るかを利用者側が把握することができます。上記の画像の通り、10連を回した時にもらえる点数がランダムなものを、ランダムポイントアップガチャと言います。

5.ボックスガチャ

通常のガチャではくじ引きと違い、何かカードを引いたとしても、そのカードが減るわけではありません。引いても同じカードが補充され、ガチャの中に入っているカードの種類や枚数は一定です(=従って確率も一定です)。ボックスガチャは通常のくじびきのように、それぞれカードが入っている枚数が決まっており、一枚引くと実際にそのガチャの中からも減ります。

また、どのカードが何枚入っているかも公開されています。つまり引いていけば、必ず自分が欲しいカードが手に入るという事になります(それぞれのカードが出来る確率は一定ではありません)。そのため、いくらで入手出来るかは確率に依存するという部分は変わりません。引き始めてしまったら、もったいないと思わせて、入手出来るまで引いてしまおうという仕組みです。

最後に

カードの基本的な内容と、ガチャの種類に関して紹介してきました。ガチャに関しては様々なガチャが開発されています。その全てを理把握する事は難しいのですが、基本的には利用者にとってどのようにお得なのかということを上手くつたえるのが大切です。射幸心も大切な要素ですが、引いてみて楽しいと思わせるようなガチャの種類や演出などにも期待したいところです。次回は最終回としてガチャの「期待値」に関して紹介をしたいと思います。特定のカードを入手するためにいくらかかるか?といった計算方法なども見ていく予定です。お楽しみに。

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