ソシャゲ分析講座 基本編(その10):「カード」と「ガチャ」を理解する(後編)

最近は業務で、ソーシャルゲームの分析&改善施策の提案を行っています。そこで、本ブログではミニ連載という形で、ソーシャルゲームの分析手法について紹介をしていきます。全10回を予定しております。今回が最終回になります。

■過去の連載記事
ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その2):「DAU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その3):「継続率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その4):「スペンド率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その5):「ARPPU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その6):「4つのステージとKPI」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その7):「イベントの分析」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その8):「イベントの分析」を理解する(後編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その9):「カード」と「ガチャ」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その10):「カード」と「ガチャ」を理解する(後編)


Amebaのソーシャルゲーム「オトギア

ガチャの確率に関して

ガチャは各カードやキャラごとに確率が設定されています。あるカードであれば出現率が2.5%、別のカードであれば1%といった形です。

確率に関してはサービスによって表示をしている場合としていない場合があります。また表示している場合も、レアリティごとの表示 あるいは カードごとの表示など多岐にわたります。確率表示は義務ではないためサービスによって対応が変わってきます。


運営側からみた表示するメリットは「ユーザーに対して信頼度アップ(後述する期待値の算出なども可能」デメリットは「調整がしにくい」といったところに集約されるのではないでしょうか。いずれにしても、多くのソーシャルゲームでは、カードごとに出現率を設定しているといわれています。

カードゲームにおけるカードの「期待値」に関して

カードゲームにおける期待値とは、「カードを入手するのにかかる金額」という形で利用される事が多いです。ガチャでカードを入手する場合は、

カードの期待値=ガチャ1回の金額×(1÷カードの出現確率)

であらわすことができます。ガチャが1回200円で、カードの出現率が2%だった場合は、カードを入手するのにかかる金額は「200×(1÷2%)=10,000円」となります。このカードの期待値はカードの強さ(パラメーターやコスト、スキルなども加味した総合的な強さ)と比例させることが大切です。上記の考え方は前回紹介した、様々な種類のガチャでも考え方は一緒です。期待値にあわせて確率を設定していきます。つまり、ガチャは先に確率を設定するのではなく、期待値から逆算して確率を設定するという考え方が一般的(のはずです)


10000円で手に入るカードが2000円で手に入るカードより弱かったら、10,000円かけてカードを手に入れる意味が無くなってしまいます。また、ずっと同じような強さのカードを提供し続けると、強いカードをある程度手に入れてしまったら(自分のデッキで使える最大値まで)、それ以上入手する必要性が無くなってしまうため、更に強いカードを出す必要があります。しかし、強いカードをどんどん出してしまったら、強さがどんどんインフレしてしまい、初心者と上級者の差がついてしまったり、単純にお金を使えば使うほど強くなってしまいます。そのため、カードの強さをどのように上げてていくかはリリース前に考えておく大切です。この辺の管理が出来ていないカードゲームはバランスが崩れやすくなってしまいます


また、ガチャ以外にカードを入手するケースもあります。イベントの得点報酬やランキングになります


『絶対純真プリンセス』のランキング報酬

イベントでもカードを入手出来る場合、そのカードを入手するのにかかる想定金額を考慮する必要があります。同じ強さのカードが、ガチャで10000円で手に入り、イベントでは30000円かかってしまうようでは、イベントに参加する意味が薄れてしまいます。該当する得点を稼ぐために、あるいは、イベントで特定のランキングに入るためにいくら金額がかかるかを算出し、それにあったカードを提供する必要があります。通常はイベントは時間を使うものなので、同じ強さのカードであれば、イベントのほうが期待値が低いほうが良いと一般的には言われています。


このように、(ちゃんと運用されているソーシャルゲーム)は厳密な計算によってカードの期待値が計算されている事が多いですが、あくまでも期待値なのでガチャ1回で欲しいカードが手に入ることもあります。そこがガチャの楽しさでもあり、難しさでもあります。


カードに強さ以外の価値をもたせる

カードを強さだけで見てしまうと、上記のような運用になってしまいます。しかし、カードに「強さ」以外の欲しいと思わせる要素があれば、新たな価値をカードに提供することができます。それはキャラクターの魅力によって作ることができます。魅力的なイラストや人気コンテンツとのコラボレーションですね。この辺も期待値に影響を与えてくる要素になれば、カード運用の幅も広がります、ゲームを遊んでいる方も納得してカードを入手してくれるようになるでしょう。カードもガチャも運用が命です。計算と感性の両方が必要ですが、ゲームの面白差に大きく関わる部分なので、この辺を兼ね備えた人がいると、良いソーシャルゲームを作ることが出来るのではないでしょうか。


最後に

全10回の連載を書かせていただきました。ソーシャルゲームについて初心者向けの記事が少なかったのでチャレンジしてみましたが、いかがでしょうか?ソーシャルゲームならではの考え方も沢山ありますが、その多くはウェブサイトの運営にも反映できるし、参考になるのではと私自身が強く思いました。ソーシャルゲームの指標や考え方を元に、様々な施策をぜひ考えてみてください!

■過去の連載記事
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