「分析」を「ビジネス貢献」に繋げるために、筆者が行っている3つの効率化手法

分析していますか?分析がビジネス貢献出来る度合いは、施策提案までのスピードと精度にあると筆者は考えています。そこで、筆者が行っている効率化の手法を紹介いたします。分析手法に依存するものではないので、どのような分析手法を使っていても、何かしらの参考になるのではと思っております。

【3つの手法】
1.過去の経験から、自分なりの分析の「勘どころ」を用意し、そこから攻める
2.分析を行いながら次の分析と施策を考える
3.施策の実現性とインパクトから、分析を効率化する

1.過去の経験から、自分なりの分析の「勘どころ」を用意し、そこから攻める


Image from Flickr

サイトの分析を依頼されたり、何かしらの気づきを発見してほしいと言われたり時には、まずは見るべきポイントというのを自分なりに作っておくと良いでしょう。例えば「今までの経験から、ここを見るとサイトの課題を発見しやすい」といったレポートとセグメントの掛け合わせ または、サイトを見て仮説を発見する際に「まずは、サイトのここをチェックしておくと見つけやすい」といった箇所の事を指します。筆者の場合は以下の10個を見れば、サイトの課題の半分くらいは発見する事が出来ます。

■見るポイント
1.同業他社とのTOPページ・一覧・詳細・コンバージョン導線比較
2.主要アクションを実際に行なってみて感じたことのリストアップ(購入直前までの推移・会員やメルマガ登録など)
3.ナビゲーションの構造とそこに入っている項目の粒度(重さ)があっているか
4.コンテンツと画像のバランス(読みやすさと見やすさ)
5.主要デバイスでのUI確認


■チェックするデータ
6.直近2年間の主要データの推移(訪問・流入元・直帰率・新規率・CV数・売上など)
7.流入元×ランディングページの掛けあわせでの流入数・直帰率・コンバージョン率
8.主要デバイス別の基本データ(訪問者・直帰率・新規率・流入元など)とコンバージョン関連の数値(パソコンVSモバイルVSタブレット
9.曜日×時間のアクセスとコンバージョン傾向
10.主要導線ページの滞在時間と遷移先


ウェブサイトを事例に取りましたが、「分析をする前にチェックしておくポイント」そして「分析で見るポイント」この2つの自分なりのリストを作っておくという事が大切になります。分析前にチェックしたポイントを仮説のベースとして、見るポイントにつなげていきます。



2.分析を行いながら次の分析と施策を考える

「分析」と「施策の検討」を別々のプロセスにすると時間がかかってしまいます。あるデータを見ている時や仮説を検証している時には、次の分析や施策のことを同時に考えていけるようになると、時間の効率化が図れますし、施策の精度も上がっていきます。


具体的にはどういうことかというと、

スマートフォンとPCのアクセスで、データを比較をした時に、コンバージョン率がスマートフォンの方が低いな。これは当然かもしれないが、どこで人が離脱しているのだろうか?ランディングページ、それとも商品に到着するまでなのか、あるいはフォームの部分なのか。次はそれを確認してみよう」


というのを、スマートフォンとPCのコンバージョン率をチェックする際に考えられるかというのがポイントになります。ある分析をしたり、レポートを見たりする前に、次のステップを考えておくということです。結果を見てから考えるのではありません。今回の場合であれば、

スマートフォンとPCのコンバージョン率を比較してみよう。もし違いがあったら、主要ステップ別に遷移率を確認して原因を特定してみよう。もし違いがないのであれば、次にページAの導線が気になったので、どのページから流入しているか、そしてどこに遷移しているかを確認してみよう」

という感じで常に準備をしておけるとよいでしょう。一歩づつ立ち止まって考えていくと、時間がかかってしまいます。



更にアウトプットの精度をあげるために、施策も同時に考えていけるようになるとよいでしょう。何故、分析と同時に施策を考えると、アウトプットの精度が上がるのか。それは、今みて感じた事は後で忘れてしまう(あるいは薄れてしまう)からです。気づきを箇条書きにしていっても良いのですが、分析が終わった後に施策を考えようとすると、どの気付きが自分にとって衝撃的だったか、あるいは、課題だと強く感じたかを覚えておくことは難しいです。可能な限り、気づきを発見した瞬間に施策を考えると良いでしょう。


そこで、先程の例に戻ると、以下のような考え方になります。

スマートフォンとPCのコンバージョン率を比較してみよう。もし違いがあったら、主要ステップ別に遷移率を確認して原因を特定してみよう。そして、フォームの部分での遷移率の違いが20pt以上(例:48%と70%)あったとしたら、両方のデバイスで実際に入力をして気になる点を洗い出してみよう。そして、それを他のサイトとも比較して、参考にする事で、改善出来るポイントを最低3つ見つけてみよう。


つまり、ある分析を始めるタイミングで、施策の考え方やアウトプットそのもののイメージを持っておくことです。


仮説出し→分析→深堀り→施策の洗い出し というのを分析のワンセットとして考え、このプロセスを繰り返すということです。従って、仮説をいっぱい洗い出す→いっぱい分析をする→いっぱい深堀りをする→施策の洗い出しをまとめて行なうという事ではありません。


何故、このようなプロセスを取るのか。それは、最初の施策が出てくるスピードが上がるということと、施策を随時出していくことで、他の施策を考える上でも参考になるからです(つまり他の施策を考えやすいという事です)。また、誰かに内容を共有する際も、分析から施策までのプロセスで説明する事が多く、その施策に説得力をもたせるために分析と施策を完全に別のプロセスとして行なってしまうと、その繋ぎが説明しにくくなるためです。


3.施策の実現性とインパクトから、分析を効率化する

何のために分析を行なうのか。それは、分析結果を元に施策を行なってもらい、ゴール達成に貢献するためです(厳密にはその可能性をあげるためです)。そのため、提案される施策に実現性が無かったり、インパクトが低かったりしては意味がありません。分析を行いながら施策を考えていくプロセスにおいて、このような結論に繋がりそうな分析は行なう意味は非常に少ないです。


つまり、分析のプロセスにおいて、インパクトがない分析は「剪定」をする必要があります。


Image from Flickr

分析を行い、施策を考えていく中で、そのインパクトを考える必要があります。先程の例を元にまた考えてみましょう

フォームの部分で遷移率がPCとスマートフォンで大きな違いがあったとします。しかし、スマートフォンでフォームに来ている人が、月に10件しかいなければ、フォーム改修の手間を考えると、割にあわなくなってしまう。それであれば、スマートフォンでの流入を増やすか、その手前での離脱を防ぐほうが、インパクトが大きいのでは。このような結果になりそうであれば、フォームの細かい分析は行わずに、スマートフォンの流入の方を確認してみよう

といった類の考え方になります。分析を進めていけば、改善ポイントは見つかるでしょう。しかし、その改善ポイントからうまれる施策は、工数をかけてでも実施するほどのインパクト(=費用対効果)があるのでしょうか?この部分を意識しないと、出てくる施策はインパクトがないものが沢山出てきてしまい、実行される可能性はぐっと下がってしまいます。


分析の量と、施策のインパクトはリンクしません。分析を進めていく中で、量が小さくなってきたら(例えば全訪問の1%未満にしか影響を与えない内容であれば)そこを深堀りするのには意味がありません。分析の目的を忘れずに分析を行なうことが、ビジネス貢献に繋がります。


最後に

分析というのは決まったプロセスがあるわけではありません。分析をしながらその進み方やスピード変えていく自由度が高い即興性があるものです。目的さえ間違えなければ、山はどのように登っても良いのです。


Image for Flickr