最近は業務で、ソーシャルゲームの分析&改善施策の提案を行っています。そこで、本ブログではミニ連載という形で、ソーシャルゲームの分析手法について紹介をしていきます。基本編は8回程度を予定しており、好評であれば応用編も書きます。第3回は「継続率」に関してです。
■過去の連載記事
ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その2):「DAU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その3):「継続率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その4):「スペンド率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その5):「ARPPU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その6):「4つのステージとKPI」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その7):「イベントの分析」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その8):「イベントの分析」を理解する(後編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その9):「カード」と「ガチャ」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その10):「カード」と「ガチャ」を理解する(後編)
Amebaのペット育成ゲーム「HuggPet」
「継続率」って何?
以下がその定義になります
●日後継続率=ある日に来た人が、●日後に戻ってきてくれた割合
という事です。例えば100人が1月1日にきて、1月8日にその100人の内、35人が戻ってきてくれれば「7日後継続率」は35%となります。
※1月1日に来た人が、1月6日あるいは1月8日に来たとしても7日後継続率にはカウントされません。
継続率を話す時、その分母は主に2種類のケースがあります。
用語 | 分母 |
「新規」継続率 | その日に初めて会員登録した人が母数 |
「既存」継続率 | 新規を除くその日にログインした人が母数 |
「継続率」を議論する時によく使われるのは「新規継続率」になります。今後どこかで「継続率」の数値や内容に関して見る機会がありましたら、基本的には「新規継続率」の事を指していると思って頂いて問題ありません。
何故、「新規継続率」を見るのか
サービスに取って成長をしていくには、新規の人が入ってきてすぐに離脱するのではなく、遊んでいただける事が非常に大切です。サービスのDAUの伸びは物凄くシンプルに書いてしまうと「新規の人 引く サービスを辞められる人」という事になります。サービスを辞める方をゼロに抑えることはどのサービスでも不可能です。そこでより多くの新規の方に継続して遊んで貰えることがDAUを伸ばす上で非常に大切になります。そしてDAUが伸びないゲームは課金が伸びることもありません。
また、前回も軽く紹介しましたが、多くのサービスではサービスを開始してすぐに課金をするという事はありません。私自身もユーザーとしてこれは思います。面白くない、あるいは継続して遊ぼうと思っていないソシャゲにお金を使うことはありません。そして面白いとか継続して遊びたいと思うためには、繰り返し遊んでいただくことが何より大切になります。そこで、それを数値として可視化してくれる「新規継続率」というのは非常に大切な数値で、特にサービスリリース当初は最も重要な指標(つまりKPI)といっても良いでしょう。
何日後の継続率を見るのが良いのか?また適切な数値は?
3日後を見れば良いのか?1週間後なのか?正解はありませんが、まずもっとも大切なのは「翌日継続率」になります。はじめてサービスを利用した人が翌日も遊んでくれるのか。そもそも翌日来てくれないのであれば、それ以降も来てくれることはありません。他に良く見る(と、聞くのは)3日後・7日後・14日後あたりになります。
以下、SocialApp様のブログ記事からの引用です。
MobageやGREEといったPF上のヒットタイトルであればこの継続率が
翌日45%/3日後40%/7日後35%/14日後30%/30日後25%ぐらいになります。
※ちなみに上記の数字は超優秀なゲームになります。「神撃のバハムート」とかはこれぐらいある模様。
私が見ている数値や感触も含めると、上記の数値感は納得が高いものです。「7日後継続率30%」あたりが一つのガイドラインかなと思っています。
どんな感じのデータなの?
日にち | 翌日継続率 | 3日後継続率 | 7日後継続率 | 14日後継続率 |
2013/01/01 | 28.4% | 23.1% | 20.2% | 19.4% |
2013/01/02 | 24.1% | 21.4% | 16.3% | 15.3% |
2013/01/03 | 27.7% | 25.5% | 19.5% | 15.4% |
2013/01/04 | 30.2% | 23.3% | 21.6% | 16.5% |
2013/01/05 | 25.4% | 22.5% | 17.4% | 14.9% |
上記のような形で日単位で見ることが多いです。このデータから主に2種類のグラフを作って確認する事が多いです。簡単にその内容を見てみましょう。
継続率はどのように上げれば良いのか?
これには沢山の方法があり、いろいろな施策を各サービスでは行っているかと思います。代表的なものは「ログインボーナス」と呼ばれる施策で、次の日にログインしたら「●●」というアイテムがもらえるよ!という形でユーザーがログイン時に告知し、その内容が欲しいために翌日もまた遊びに来るといった類のものです。多くのソシャゲで取り入れられているため、ソシャゲを遊んだ事がある人は知っているかと思います。
先に代表的な物をあげましたが、継続率を上げる方法は主に2つあります。1つが「サービス内で実施する施策」、もう1つが「サービス外で実施する施策」になります。
サービス内で上げる施策
「繰り返し遊びたくなる」という観点で施策を考えていきます。主に4つの観点があります。
1.明日来ると「お得なこと」がある
2.明日サービス内で「したいこと」「するべきこと」がある
3.明日にならないと「出来ないこと」がある
4.楽しいからまた明日も遊びたい
長くなってしまうので、詳しくは論じませんが、本質的には「4」を目指しつつ、1〜3の施策を常に考えて実行するのが良いでしょう。もう少しだけ言及しておくと、ユーザーの状況やサービス利用からの日数によって効果的な施策が違う、という事です。初心者にとっては「成長実感」あるいは「直近の目標」がポイントになりますし、利用が長くなってきたユーザーにとっては「豪華な報酬」「コミュニケーション出来る仲間」かもしれません。ここに「しがらみ」という要素も関わってくるでしょう。
サービス外で上げる施策
サービスを運用していると欠けてしまいがちな視点なのですが、継続するかしないかは、どこから集客を行ったかによって変わってきます。ウェブサイトでは流入元という観点から直帰率やリピート率などを確認することで重視されている指標の一つなのですが、ソシャゲの場合は流入元が取得できないあるいは制限されているという観点から、軽視されがちです。しかし、ある程度までの分析は可能です。
どの媒体でどういうクリエイティブで告知をしたか、(また想定される)会員登録の流入元の内訳を見ることで、その数値が継続率にどう影響しているかを確認しましょう。例えば複数サービスを持っている会社であれば、サービス間でお互いに誘導施策を強化した時に、会員獲得やDAUだけではなく、あわせて継続率への影響も確認しましょう。「1000人の新規会員が5%継続」してくれるより、「300人の会員が40%継続」してくれるほうがサービスとしては大切です。継続率も大切なのですが、必ず「継続数」もあわせて確認をして、改善していきましょう。
継続率に関するバリエーション
「継続率」というのはソシャゲならではの指標です。業界自体がまだ数年ということもあり、「継続率」は重視されてはいるのですが、この指標が果たして適切なのか?という議論はよく有ります。例えば
1.「7日継続率」「14日継続率」という指標を見た時に、たまたま8日〜13日目まで毎日ログインしたけど、7日目と14日目にログインしなかった人はカウントされませんし、
2.ログインボーナスのためだけにログインする人と、毎日5時間遊んでいる人が同じ評価で良いのか?
などが議論になりやすい例です。これを回避するために「連続ログイン」であったり「滞在時間」であったりを指標として利用するケースが多いです。あるいは更に踏み込んで「特定のアクションをソシャゲ内で行った人」の継続率という考え方もあります。サービスの状況によっても違ってくるかとは思いますが、このような新しい指標も検討しながら、当面は「継続率」がKPIとして、今後も利用されていく事は間違いないかと思います。
最後に & 次回の内容
というわけで、ソシャゲならではのKPIである「継続率」について紹介をしてきました。アクセス解析をずっと行ってきた人間としては非常に面白いKPIであり、ウェブサイトにも応用出来る内容が沢山あるのではと感じながら日々業務を進めております。次回は「課金率」と「ARPPU」に関しての紹介です。お楽しみに。
■過去の連載記事
ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する
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