ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する

最近は業務で、ソーシャルゲームの分析&改善施策の提案を行っています。そこで、本ブログではミニ連載という形で、ソーシャルゲームの分析手法について紹介をしていきます。基本編は8回程度を予定しており、好評であれば応用編も書きます。第1回は基本的な指標から見ていきましょう。

■過去の連載記事
ソシャゲ分析講座 基本編(その1):「売上の方程式」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その2):「DAU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その3):「継続率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その4):「スペンド率」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その5):「ARPPU」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その6):「4つのステージとKPI」を理解する
ソシャゲ分析講座 基本編(その7):「イベントの分析」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その8):「イベントの分析」を理解する(後編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その9):「カード」と「ガチャ」を理解する(前編)
ソシャゲ分析講座 基本編(その10):「カード」と「ガチャ」を理解する(後編)


Amebaの農園ゲーム「ファーミー

ソーシャルゲームの(私なりの)定義

一人あるいは複数のユーザーで楽しむオンラインのゲーム。コミュニティ及びユーザー間同士の協力や対戦などの要素を含む。農園や街を育てたり、カードを集めてデッキで戦ったり、特定のパズルを解きながらステージを進んだりというアクションが行われる。基本料金は無料で、アイテム課金という形で売上を立てている。主なゲームとして「パズル&ドラゴンズ」「怪盗ロワイヤル」「神撃のバハムート」「ガールフレンド(仮)」「アイドルマスターシンデレラガールズ」「農園ホッコリーナ」などがある。


売上の方程式を理解する

ソーシャルゲームにおいて、売上を見る上でもっとも基本かつ重要な方程式があります。それは以下の通りです。

1日の売上 = DAU × 課金率 × ARPPU

という式です。本ブログを読んでいる方であれば、ECサイトに例たほうが分かりやすいかもです

売上=訪問者×コンバージョン率×単価

という式になります。それぞれの単語についてまずは簡単に説明いたします。

DAU

Daily Active User の略称で、その日のユニークな訪問者数を指します。これが週別・月別の場合はWAUやMAUという名称になります。ソーシャルゲームにおいては、アクセス解析で良く利用する「セッション」という概念は基本的には使われておらず(滞在時間という概念がありますが、これはまた連載の後半で)ユーザー単位で基本的には集計や分析を行います。これはソーシャルゲームでは、主に「ログイン」をしてサービスを利用する事から、ウェブサイトよりはユーザー特定の精度が高いからという背景もあります。

課金率

該当期間の訪問者の中で、支払いを行った割合を指します。ECサイトで言うユーザー単位のコンバージョン率になります。サービスに対して「お金を払っても良い」と思っている人数が反映される指標になります。

ARPPU

「Average Revenue Per Paid User」という長い文章の略称で、簡単に言うと「支払った人の平均単価」になります。サービスに対して「いくらまで使いたい」と思っている人数が反映される指標になります。また似たような指標としてARPU(Average Revenue Per User)という指標もあります。こちらは、ユーザー一人あたりの平均売上金額となり、サイトに1人訪れると平均いくらの売上になるかを表したものです。つまり

1日の売上 = DAU × 課金率 × ARPPU = DAU × ARPU

という式になります。


売上を上げるためには

基本的な考え方は「DAU」「課金率」「ARPPU」のいずれかを上げる必要があります。つまり「より多くの人にサービスを利用してもらう」あるいは「より多くの人にお金を払っても良いと思ってもらう」あるいは「より多くのお金を出しても良いと思ってもらう」かのいずれになります。そしてこの3つの指標は、相互の影響を与えることが多いです。ECサイトでも強引な手法で人を集めてもコンバージョン率が落ちるように、ソーシャルゲームでも強引に人を連れてきてしまうと、課金率やARPPUなどが落ちてしまいます。


どの指標をどういう戦略で上げていくか。サービスの担当者やアナリストはまずそのプランを最初に決める必要があります。どの指標を利用するべきかは、「改善の余地がどれくらいあるか」「施策の難易度と実現度」などに依存します。またある指標をあげたら、次は他の指標を上げるという考え方もよく行われています。


そして多くのサービスでは、売上をKGIとし、DAU・課金率・ARPPUの3つの指標をKPIとして設定し、日あるいは週単位でのモニタリングと改善を行っています。また複数サービスを展開している場合は、それぞれのKPIを比較しながら、どのKPIを優先的に改善していくかを決めています。複数サイトを運営している場合、これらKPIはベンチマークされ、他サービスでの改善事例や横展開されることも多いです。これはウェブサイトと比べて、基本的な仕組みやループなどが似ているサービスが多いこともその一因です。