国産の定番アクセス解析ツール「Visionalist」をレビューしました

今回は株式会社デジタルフォレストが提供する、アクセス解析ツールVisionalist」を紹介いたします。国産ツールとして2003年より、長年提供されている人気のアクセス解析ツールです。

注意:
1)本レビューに際してのツール使用時間は20時間ほどです。過去バージョンも含めた、業務での利用歴は2000時間を超えます。一部の機能や設定を見逃している可能性があります。

2)過去のツール紹介記事と同様「広告記事」ではありません*1
ツールのレビューを希望される会社様・個人の方は「こちら」をご覧下さい。


長文になりますので、お時間がない時は「はてなブックマークに追加」して、後ほど読んでいただければ幸いです。


Visionalistの概要

Visionalist」はPC及びモバイルサイト向けのアクセス解析サービスです。ASP型(タグを計測対象ページに追加する)及びサーバーインストール型の両方があります。またモバイルではモジュール・タイプとライブラリ・タイプという形式が用意されています。今回はPC版のレビューを行います。


料金は、月間150,000PV以下で月額52,500円(+同額の初期導入費)からとなります。[詳しい料金表はこちらをご覧ください。3億PVまでの料金表が乗っており、大規模サイトでも利用が可能です。


では、「Visionalist」の機能を紹介していきます。今回はサイトを分析する上で、Visionalistを使って、どういう順番と機能を使って分析を行うかを8のSTEPで紹介するといった形でレビューを行います。

Visionalistを使った8のサイト分析STEP

1)全体の数値とトレンドを把握

まずは、サイト全体の数字を見にいきます。アクセス数のトレンド、例えば期間別や曜日別、新規・リピートなどの訪問回数の分布をチェックします。更にアクセス数が多いページや機能を見て、概要をつかみます。


サイト全体の日別数値。プルダウンでPV・訪問回数・訪問者数を簡単に切り替えられます。



「ページ別」のレポートで、ページ単位だけではなく、左下にある「計測対象」のメニューから、「ディレクトリ」や「担当者別」といった設定したグルーピング単位で分析を行うことができます。ここでは「ページ内容」単位のグルーピングをしたレポートを出してみました。事例より機能のページ群のほうがよくみられている事がわかります。CSVでマスターをアップロードすれば、簡単にグループをつくることができて非常に便利です。




次に訪問回数の分布を見てみましょう。ここでは、集計期間での訪問回数を見ることができます。以下の画像を見ると、このサイトでは、初回訪問が7割を超えることがわかります。しかし、成果や特定のコンテンツにたどり着いている人はどうなのか?
それもあわせて調べるためには、左下にある「成果訪問の定義」で成果を設定します。多くの他のアクセス解析ツールのように単一のページを選べるだけではなく、前述のグルーピングした単位での成果を選択する事が可能です。


今回の例では、「担当者ごと」から「セミナーTOP」を選択しました。ある担当者が自分が担当しているページあるいはコンテンツの数字を見たい時に便利です。成果を設定して、再度レポートを表示すると、訪問回数の分布とは異なった結果が出ました。表の右から2番目にある「到達率」を見ると、初回での閲覧が少なく、基本的には訪問回数が増えれば増えるほどセミナーを見ることがわかります(ただ成果の母数が少ないため「参考値」という使い方にはなります)。



2)集客の概要を掴む

サイトの全体像が見えてきたところで、次にどこからサイトに訪れている人が多いのか、また、そこからのコンバージョン率はどうなのか?という事をチェックしましょう。


Visionalistでは非常に使いやすい集客の分析レポート群が揃っています。それが「進入経路」と「広告分析」の機能です。私も業務で一番使っていたのが、広告分析内にあるレポート群です。では、早速中身を見てみましょう。


まず、全体を掴むためにチェックするのが「進入経路」の中にある「進入経路サマリー」というレポートです。これは、流入を4つの流入に分けて、その比率や基本的な情報を見せてくれるレポートです。


自然検索・広告・他サイト・直接進入ごとの訪問(新規・リピート)・直帰率・平均PV・平均滞在時間が一目でわかります。


このレポートがあれば、全体の比率や、更に改善が必要そうな直帰率が高いページなどがわかります。上記の例ですと、広告という有料の集客方式にも関わらず、直帰率が他と比べて高く、平均PVや滞在時間も短いことがわかります。広告を更に分解して見る必要がある事がわかります。



3)集客の詳細を掴む

広告分析には後で戻ってくるとして、それ以外にも「進入経路」で得られる情報を紹介します。まずは4つの流入元に対して日別のトレンドを見ておくことが大切です。ある日、突発的な増減がないかをチェックしましょう。もしそのような日があるのであれば、その日だけに絞って、どの流入元が原因かを確認し、実際に流入元のページを自分で見てみましょう。


また、流入の内訳を見るという観点では、検索ワードと検索エンジンの情報も非常に大切です。どのようなワードでの流入が多く、コンバージョン率が高いあるいは低いワードを見つけることによって、具体的な対策箇所が見えてきます。


Visionalistの検索キーワードレポートを見てみましょう。

検索ワードごとの流入数だけではなく、様々な絞り込みが可能です。検索エンジン、あるいは、有料検索(Overture/Adwords経由)なのかといったものです。


更に左下にある「絞り込み条件の設定」を使うと、非常に豊富な絞り込みが可能です。例えば「ある特定のページを通過し、訪れたセッションの閲覧PV数が2以上、かつリピーターで、初回からの訪問が1ヶ月以内」といった具合です(ここまで複雑な絞り込みは通常行わないとは思いますが)。
このような自由な絞り込みが、数多くのレポートで行えるのがVisionalistの魅力の一つです。


絞り込み設定。表示されている以外にも、接続元ドメインやブラウザといった絞り込みも可能です。



4)広告を複数の観点から評価する

では、次にお金を利用している場合が多く、費用対効果を見る必要がある「広告分析」をチェックしたみたいと思います。


まずはVisionalistの広告の考え方を紹介します。広告という事を認知するためには、入稿するURLに「広告パラメータ」を付ける必要があります。多くのアクセス解析ツールで利用されている方式です。


例えば、私のブログからVisionalistのサイトにリンクをはるとしたら、

http://www.visionalist.com/?banner_id=blog008

といった形になります。?マークの後ろにあたるbanner_idがパラメータ名、そしてblog008が広告IDになります。Visionalistでは広告ID単位で、訪問回数・新規率・直帰率・平均PV・平均滞在時間・成果へのコンバージョン数やコンバージョン率を確認する事ができます。


以下は、リスティング用に発行した広告IDごとのレポートになります。


広告ID単位だと、数が多くて集計するのが手間になる事があります。そこで、Visionalistでは広告にラベルをつける機能が備わっています。
こちら、広告IDに対して、キャンペーン・媒体というカテゴリの名称をつけることが可能です。設定画面から、マスターをCSVファイルとしてアップロードすれば、画面に反映される形になります。


先程のブログの例でいえば、

広告ID=「リアルアクセス解析」からのリンク
媒体名=読者ブログ
キャンペーン=ブログ・SNS


といった名称になるかもしれません。リスティングであれば

広告ID=Visionalist
媒体名=ブランドワード
キャンペーン=リスティング

といった形でしょうか。


広告分析では様々な指標を追加する事ができます。以下がその一例になります。


個人的に見るべき指標と感じたのは「訪問回数」「新規率」「直帰率」「平均PV」「平均滞在時間」「コンバージョン数/率(訪問回数)」「コンバージョン数/率(PV)」「CPC」「CPA」「売上」の指標です。ちなみに「コンバージョン数.率」の(訪問回数)と(PV)の違いですが、1回のセッションで、例えば資料請求を2回した場合に、1と数える(訪問回数)か、2と数える(PV)かの違いです。


複数回応募が多いようなサイトであれば、PVのコンバージョン数や率を見たほうが、集客効果の違いがより明確になります。会員登録のような通常は1回しか行わないような成果であれば、訪問回数で問題ありません。


他にもこの「広告分析」内のレポート群で役立つレポートを二つ紹介します。ひとつは「間接広告効果」のレポートです。多くのサイトでは、一回目の訪問でコンバージョンするとは限りません。例えば一回目はリスティングでサイトに訪れ、二回目で自然検索でコンバージョンしたとします。
この場合、成果の貢献は通常、自然検索にひもづきます。そして、有料であるリスティングは価値が無いとなってしまうのではないでしょうか?でも、サイトに初めて連れてきたという観点から、リスティングには一定の効果がありました。こういった間接的な効果を見るのが、このレポートです。早速、中身を見てみましょう。



各項目の意味は以下のとおりです。

  • 直接効果

該当広告コードでサイトに入ってきて、そのセッション内でコンバージョンした回数

  • 間接効果

コンバージョンしたセッションの広告ではないが、コンバージョンしたセッションの「訪問者」が過去30日以内に、該当広告で流入してきた回数。過去に同じ広告で2回流入してきた際には「1」とカウント

  • 全体効果

直接効果+間接効果

  • アシスト数

基本、間接効果と同じ考え方。ただし、過去に同じ広告で2回流入してきた際には「2」とカウント。

  • 初回広告

30日以内とか関係なく、コンバージョンした訪問者が、サイトにはじめて訪問するきっかけの広告。初回が広告でない場合は、計測されません。


この辺、このレビューを読むという観点では上記の5つの単語を理解しておく必要がありません。Visionalistでは、このような数値が取得出来、様々な広告分析に利用出来るという事だけ分かっておけば大丈夫です。


もうひとつのレポートは「リピーター化分析」とよばれるレポートです。これは、広告ごとに、新規の訪問をどれくらい連れてきたか、そして新規に連れてきた数のうち、どれくらいが再訪問者となって、サイトに訪れてくれたかをあらわすレポート。
他のアクセス解析ツールではあまりみないレポートですが、こちらも広告の効果をはかるのに有効なレポートです。


見ての通り、広告ごとに再訪問率が大きく違うことがわかります。前述のとおり、多くのサイトでは初回訪問ではコンバージョンしにくい事を考えると、この再訪問者率が高い広告を評価してあげることも大切なのではないでしょうか。



5)サイト内動線を探る

集客がひと通り見終わったところで、次に確認するのはサイト内の動きです。まずは、主要ページの動線を確認してみましょう。ここで言う主要ページとは主に、アクセス数が多かったり、最近追加したページだったり、コンバージョンに影響が大きそうなページを指します。


まずは「経路分析」のレポートを見てみましょう。起点となるページを選択すると、そこから次にどこに行ったか、あるいは、そのページにどこから来たかを確認する事ができます。一目でサイトに訪れた人がどこに遷移しているかがわかります。



特に、こういった分析は行き先が決まっているページで便利です。例えば「入力フォーム入力⇒確認⇒完了画面」とか「記事1ページ目⇒2ページ目⇒3ページ目⇒4ページ目」といった形です。ユーザーより離脱しているところを見つけるのが改善に役立ちます。このようなページの場合は、遷移図が横長になります。逆に複数のメニューがあるTOPページなどは、そこから様々なリンクに遷移するため縦長な遷移図になるはずです。


また、このレポートでも絞り込みができます。ですので、成果に辿り着いた経路分析だけを行ったり、新規とリピーターの違いを見たりという事が可能です。サイト内の課題となるページ、あるいは、有効なページを見つける上で非常に便利かと思います。


更に、検索エンジンや検索キーワードで絞ってみても面白い結果が出そうです。サイト内の動線は集客元に依存することも多く(サイトの「後半」になるフォーム部分を除く)、課題となっている検索エンジンやキーワードがあるのであれば、さらなる分析をするためには大切なレポートです。


6)コンバージョン分析

次に、「コンバージョン」という観点から分析を行いましょう。紹介してきたレポートの中でも、コンバージョンが絡む部分がありましたが、ここではコンバージョンを主においたときの分析になります。
すべて「コンバージョン分析」というメニュー内にレポート群があり、そのなかで特にオススメしたい3つのレポートを紹介しながら、分析方法を書きます。


まずは「コンバージョンサマリー」のレポートです。非常にインパクトがあるビジュアルが特徴のレポートです。


左側にある成果に対するサマリー情報。そして右側の円グラフが、成果の内訳を、本レビューの前半で紹介した4つの流入元による内訳です。一番真ん中の円が成果、その外が内訳、更にその外が4つの流入を更に分類した物になります。例えば、青い円の部分は、自然検索ですが、一番外周には成果に貢献したワードを見ることができます。


更に設定を変えることで、広告>キャンペーン>媒体>広告IDといった詳細分析も可能です。非常に分かりやすく、一目で効果の貢献を見られます。残念なのはこの状態でレポートをダウンロード出来ないところです。ぜひ、つけてほしいところです。
一目で成果の状態を把握するためには最適なレポートなので、成果の分析をする際にはまずこのレポートを見ましょう。


次に確認したいのが「コンバージョン貢献ページ」です。これは名前の通り、どのページがコンバージョンに貢献しているのか?を確認するレポートです。



こちら、各ページの訪問回数のうち、何回成果のページに他取り付いたかというのを表すレポートです。1000回訪問がある二つの特集で、特集Aが40回、特集Bが100回、成果に辿り着いたのであれば、特集Bのほうが効果が高いと言えるでしょう。


このように成果に貢献しているページを見つけたり、逆に成果に貢献していると思っていたのにしていなかったページを見つけたりすることで、サイト内コンテンツの改善ヒントを見つけることができます。
なお、数字を比べる際には以下に気をつけてください。

A) 成果の母数が少ない場合は、あまり参考にならない。100回アクセスがあった二つの特集のうち、片方が2回、もう片方が1回では、コンバージョン率の差は2倍ですが、件数ではたったの1件です。分析をする際には、最低でも50件の成果数はほしいところです。

B) 同じようなページを比較してください。TOPページとフォーム入力確認ページでは、後者のほうが成果貢献が高いのは当たり前です。複数の独習や、サイト内検索結果一覧とランキングページといった、似たようなコンテンツを比較しましょう。


最後に紹介するレポートが「フォールアウト」と呼ばれるレポートです。これは、事前に「シナリオ」といった形で、遷移対象となるページを設定しておく事により、その遷移を通った回数が分かるという機能です。。ページ間には複数のページが入ってもカウントされるという機能で、行動分析内にある経路分析(これは隣り合ったページ間の遷移を見る)とは違う使い方ができます。




7)さらなる詳細分析

ここまで紹介してきた分析方法で、サイトの主要な分析は終わりです。しかし、Visionalistには更に深い分析を行うためのレポートが複数あります。今回はその中から、「クロス集計」と「RFP分析」の機能を紹介します。


まずはクロス集計。これは二つのデータを掛けあわせて分析出来る機能になります。説明より画面を見たほうがわかりやすいかと思いますので、まずはスクリーンショットを見せますね。


こちらは、進入ページと閲覧ページ数をかけあわせた物です。出ている数字は進入ページ内での比率になっております。実数を出すことももちろん可能です。



上記の図から、どのページで進入してくると、平均閲覧ページ数が多くなるかが一目でわかります。例えばサイトTOPは、1ページの比率が他の進入ページと比較して少なく、2ページ名以降の比率他のページと比べてすべて高くなっています。


このレポートでも絞り込みができます。下記の例はYahoo!から入ってきて3分以上滞在したセッションのデータに対して、検索ワード×リピート回数を分析しています。特定のセグメントだけの分析、あるいは、課題発見に非常に役立つレポートです。この機能をそなえているアクセス解析ツールは、Visionalist以外にほとんどなく、深い分析をする際には非常に使いやすい内容となっています。


もうひとつの「RFP分析」も見てみましょう。RFPとは「Recency,Frequency,PV」の略で、この3つの単位で、訪問の分布を見ることができます。例えば以下のスクリーンショットは、「Frequency」のレポートです。
これは、訪問間隔の平均日数をあらわしています。



例えば30日以上訪れていない会員に対して、「カムバックキャンペーン」を用意し、実施したとしましょう。その時にこのレポートの「30日以上」の割合がどれくらい増えるかで効果を測定する。といった使い方が可能です。施策と連動して使うことで価値を発揮するレポートではないでしょうか。


8)ダッシュボードの活用

最後に運用の観点から、定期的に良く見るレポートがあるかと思います。これらをひとつの画面で簡単に観るために用意されているのが、ダッシュボード機能です。


複数のレポートをひとつの画面にまとめて、達成度合いを確認したり、レポーティング用に印刷したりという事ができます。以下がVisionalistのダッシュボード例です。


このように分かりやすいビジュアルで複数のレポートをまとめてチェックすることができます。各レポートにあるリンクを押すと、Visionalist内の該当レポートに飛ぶことができます。


また、複数のダッシュボードをブックという単位で管理・作成する事が可能で、定期的なレポート配信設定や、共有の権限などもつけることができます。


見るものが決まってきたら、ダッシュボードの設定を推奨します!


まとめ

かなり長いレビューになってしまいましたが、「Visionalist」の特徴が伝わってのではないでしょうか?メニューのレイアウトや名称のわかりやすさなどもあって、とても良い意味で「スタンダード」なアクセス解析ツールだと改めて感じました。


細かい改善要望みたいな物はあります。例えば「各レポート画面でのCSV形式以外のダウンロード」「各用語の説明を各レポートの下に入れてほしい」「各レポートで表示項目の追加が自由に行いたい(例:ページのレポートで直帰率・新規率などを追加)」「週や月以外の期間での足し上げではないユニークな訪問者表示」などがその一部です。


しかし、この辺は必須ではない物も多く含まれており、通常分析を行う上ではそれほど気にならないでしょう。
逆に「クロス集計」「豊富な広告とコンバージョン分析」「各レポートでの絞り込みの豊富さ」「使いやすいダッシュボード」などが他のツールと比べて優れています。


小規模〜大規模のサイトまで対応出来る強力なアクセス解析ツールです。無料アクセス解析ツールのSTEPUPを考えている人、あるいは国産ツールならではの使いやすさとサポートの良さと実績を重視される企業にとっては、検討リストの上位に入るツールと断言しても良いでしょう。長年利用されているツールにはそれだけの理由がある事を改めて感じました。


今回はデジタルフォレスト社の「Visionalist」をレビューしました。次回は同じくデジタルフォレストによって提供されている、競合分析などを行える「Visionalist アクションリサーチ」をレビューしたいと思います。こちらにもぜひご期待ください!



今回レビューしたツールVisionalist



★「リアルアクセス解析」では様々なアクセス解析及び周辺ツールをレビューさせていただいております。レビューを希望される企業様がいらっしゃいましたら、「ツールレビューに関して」という記事をご覧の上、ご連絡ください。

*1:当ブログではアクセス解析サービスの広告記事は受けておりません