ウェブサイトの改善を行なう上で大切なのは分析だけではなく、その結果を元に施策を考えて実施することに他なりません。分析だけではなく施策を考えて実行して、結果が出てはじめて分析がサイト改善やビジネスに貢献したと言えるでしょう。といった内容をセミナーで話したりブログで書いていたりすると、ではその「改善施策」はどのように考えればよいのか?と聞かれることがあります。そこで筆者が良く利用している3つの方法を紹介いたします。
3つの方法
方法1:分析結果を分類して考える
方法2:自社・同業他社のサイトを参考にする
方法3:ユーザーの声を集める
方法1:分析結果を分類して考える
アクセス解析などでデータから気づきを発見し、その結果を活用するのは有効な方法です。データによる裏付けがあり、改善施策を行った時に該当する指標が改善するかを測りやすいからです。しかし闇雲にデータをみても施策に活かすことができません。そこで分析結果を3種類に分類すると施策が圧倒的に考えやすくなります。その分類と考え方は以下の通りとなります。
分類名 | 例 | 使い方 |
良い気付き | 直帰率が低いランディングページ・コンバージョン率が高いキーワード・リピートに繋がっている流入元など | 該当件数を増やす方法を考える(量を増やす)・他ページやコンテンツなどに反映出来ないかを考える(種類を増やす) |
悪い気付き | 直帰率が高いランディングページ・離脱に繋がっているページ・ユーザーを迷わせているUI・コンバージョンに繋がっていない有料集客 | 該当箇所を減らすか無くす・既にある良いページ・コンテンツ・流入元などを参考に改善する |
トレンド/傾向 | 特定のタイミングで増加する検索ワード・曜日や時間帯での特徴など | 増えるタイミングを最大限活用し、減るライミングをどう乗り切るかを考える |
このように気付きを分類することで、施策の考え方が明確になり、より施策を考えやすくなります。
方法2:自社・同業他社のサイトを参考にする
施策そのものを考えるという意味では、方法2をぜひオススメしたいです。自社での成功事例や過去の施策の結果はデータもあり、参考になることが多いでしょう。サイバーエージェントにいた時はKPTの手法を使って施策の振り返りや改善を行っていました。
KPT参考記事
KPTで粘り強く品質改善に取り組んだ話(クックパッド開発者ブログ)
今日からできる!全員参加型の建設的フィードバック「ふりかえり」〜実践編(KPT・タイムライン)(エンタープライズジン)
自律的に現場を改善できるチームをつくるための「ふりかえり」の進め方 〜 KPTと進め方のノウハウ(Social Change)
自社で成功した担当サイトあるいは他サイトの事例はぜひ積極的に取り入れていきましょう。A/Bテストの結果を記録・共有するだけでも大きく変わってきます。
また、会社でそのような取り組みを行っていなくても、個人での取り組みも可能です。筆者が定期的に行っているのは、良いと思ったページや施策のスクリーンショットを撮っておくことです。気になったページや使いやすいと感じたUIなどを記録しておくと、自分の施策の引き出しを増やすことが出来ます。以下はその一例です。
一回限りの割引事例。右上のボタンを閉じると割引を受けられなくなる
スマホサイトでの「パンくず」リストの設定方法として参考に
また同業他社との比較も有効です。徹底的にサイトを利用して、良い所・悪い所を発見して活用するとよいでしょう。よほどユニークな業界でない限り、参考に出来る同業他社は必ずいるはずです。ぜひ定期的にチェックしたり、「返品処理をしたい」「あるコンテンツを探したい」などのシナリオを立てて比較してみましょう。筆者は良く比較表などを作成して同業他社をチェックしています。
方法3:ユーザーの声を集める
分析からのデータ、あるいは、自分だけの能力では限界があります。そこで、サイトやサービスを利用している人の声を活用しましょう。集める方法は多種多様に渡ります。ユーザーアンケート・インタビュー・テストを実施してもよいですし、ソーシャルメディアでの発言やアプリのレビューなどを収集するという方法もあるでしょう。ユーザーの声を集めて利用する際に気をつけないといけないポイントが2つあります。
1:目的を明確にしてから声を集める
なんとなく声を集めたり確認したりするのではなく、先にお題を設定しておきましょう。「特定の機能の利用勝手を確認したい」とか「特定のリテラシーや年代・性別の意見を聞きたい」などが考えられます。目的を明確に設定することで、不必要な情報に惑わされずに済みますし、必要な情報だけを集めたり確認したりすることで時間を削減することも可能です
2:集める声のバイアスや前提を認識した上で活用する
サービスを既に利用している人とはじめての人では感じる部分は大きく違います。またアプリのレビューはレビューを書かせるシチュエーションやタイミングによってその内容は大きく変わってきます。前提を認識した上で内容を確認しないと、意のままに結果を利用したり、誤った判断をしたりしてしまいます。大切なのはその前提を他の人と事前に共有し確認しあっておくことです。その作業を怠ると、施策の提案あるいは実施のタイミングでツッコミが入ります。
データのようにわかりやすかったり、自分の想像や事例から施策を考えたりするより手間はかかりますが、新しいチャレンジを行う場合、あるいは最初の2つの方法で行き詰まってしまった場合は、新たな突破口や気づき発見のために活用したい方法になります。
まとめ
3つの手法を紹介してきました。1つの方法で全てを解決することは出来なく、状況に応じて使い分けあるいは複数の利用が必要です。いずれにせよ大切なのは自分にとっての「施策の引き出しの数」を常に増やし続けるということです。施策のストックが多ければ多いほど、施策を考えるスピードが上がり、成功につながりやすくなります。今回の方法が参考になれば幸いです!
あわせて読むと理解が深まるかもな他エントリー
分析部署として貢献するための10の考え方
「分析」を「ビジネス貢献」に繋げるために、筆者が行っている3つの効率化手法
「アクセス解析」における5つの真実