「ウェブ解析士マスター」講座の内容と作成レポートを公開!受講(&合格)してわかったこと ★後日談あり★

青字部分を2016/12/10に追記

 

ウェブ解析士」という資格を聞いたことがありますか?アクセス解析に関わっている方は知っている方も多いでしょうし、ネットマーケティングに携わっている方は「名前だけは聞いたことがある」とか「名刺交換した時に、その人の名刺に入っていた」という認知かもしれません。

 

ウェブ解析士は、「ウェブ解析士協会」が提供しています。

 

www.web-mining.jp

 

【重要】本内容は2016年6月現在の情報です。現在の内容と一致しない可能性があります(というか、結構改定入るようです)。本内容の活用は自己責任にてお願い致します。

 

成果につながるウェブ解析ができる人材を育成することを目的に認定資格及びセミナーなどを開催している一般社団法人です。

 

初級・上級・マスターの3段階の資格があり、資格取得者は16,000名(サイト掲載情報)を超えます。一番上の資格であるマスターに関しては、現在サイトに公開されている人数で105名となります。今回は筆者が、「ウェブ解析士マスター」を受講して感じたことやその内容を紹介いたします。筆者は2016年4月~5月に同講座を受講して合格しました(36期)。

 

【立場の整理】私自身は2016年4月から同協会の顧問を務めることになりました。そういった背景もあり、良い機会でしたのでマスター講座を受けることにしました。本内容に関しては代表理事の江尻さんにも、事実誤認など無いかを確認いただいた上で掲載をしております(内容に関しての修正は特にありませんでした)。

 

 

ウェブ解析士マスターの講座内容

講座の流れについては以下のページから確認できます。

 

www.web-mining.jp

 

しかし、これだけ見てもよくわからないかと思います(私も見てもよくわかりませんでした)。

 

基本的には4回(1回8時間前後。大体時間押します)+2回(こちらは資格取得には直接影響ありません)の開催となります。最初の4回は隔週くらいで開催されます。

 

まず大前提として、ウェブ解析士マスターは、ウェブ解析に関するスキルを更に習得する場ではありません。ウェブ解析士マスターでは、主に2つのことができるようになるのがゴールです。

 

・クライアントや社内に対して提案レポートを作成する事ができるようになる

・初級及び上級解析士受講希望者からお金をいただいて、セミナーなどを開催できるようになる(初級や上級の内容を理解し、講座形式で話せるようになる)

 

という2つを学び&実践します。

 

つまり講座の内容も、「ウェブ解析士の役割や、セミナー実施の際のお金の取り分やルールなどに関して」また「実技試験のためのロールプレイの練習」などが中心となります。

 

 

ウェブ解析士マスターに合格するためには

ウェブ解析士に合格するためには

1)マクロレポートを作成して合格をする

2)ミクロレポートを作成して合格する

3)実技試験を合格する

 

この3つを全て満たす必要があります。1個でも足りないと資格取得とはなりませんしかし、救済処置として、次回のマスター講座開催時には未合格の部分だけを再提出・再実施することが可能です。ちなみにマスター講座自体は、代表の江尻さんのみが(現在は)開くことができます。

 

3つの内容については後で触れますが、この3つを採点するのは「現役のウェブ解析士マスター(複数名)」となり、その採点結果を元に江尻さんが最終的な合否を出します。筆者の感覚では、明らかなミスや足りていない部分が無く、採点者の半分が合格を出せば、受かるイメージです。

 

最初に4回の講座があると話しました。

この回数と合格の関係は以下の通りとなっています。

 

1回目:授業を受ける

1回目~2回目の間:マクロレポートを作成し提出する

2回目:マクロレポートの合格・不合格発表 及び フィードバックをもらう

2回目~3回目の間:ミクロレポートを作成+マクロレポート不合格の人は再提出

3回目:マクロレポート及びミクロレポートの合格・不合格発表 及び フィードバックをもらう

3回目~4回目の間:マクロ・ミクロレポート不合格の人は再提出

4回目:実技試験を行なう。実技試験・マクロ・ミクロレポートの合格・不合格発表

 

 

つまり、マクロレポートに関しては提出(=採点)の機会が3回、ミクロレポートに関しては2回、実技試験は1回という形になります。この期間で受からなかった場合は、次の開催期間中に提出あるいは実技試験を行なうという形になります。

 

※ちなみに筆者はマクロレポートは2回目、ミクロレポートと実技試験は1回目に合格しました。

 

また、合否に直接関係はありませんが、2日目に「プロジェクトフォーラム」というグループでのディスカッション実施や、複数名でグループになった上で解析の勉強会(無料・有料)を開くことが求められます。後者の勉強会の開催がDay5にあたる内容になります。

 

 

授業内容に関して

上記の通り、レポート作成や実技試験が中心となるため、聞いて学ぶというような内容はほとんどありません(毎回1~2時間程度)。残りの時間は、みんなの前で実技試験のロールプレイをしてフィードバックをもらったり、マクロやミクロレポートの内容に関してどういったフィードバックがあったのかを直接アドバイスされたりというような時間となっています。

 

なお、これら合否やフィードバックは基本全員に共有されます。同時に受けている受講生+運営のFacebookグループが作成され、そこでやりとりが頻繁に行われる形になります(今回の受講生は私も含め15人前後でした)。他の人が作成したレポートやフィードバックなども当然参考にすることが出来ますし、実技試験のための「アンチョコ」共有などもOKとなっています。

 

基本的には授業というマインドで行くと、肩透かしを食う形となります。つまり、「改善提案のレポートを作成出来るようになりたい」あるいは「ウェブ解析士の育成や教育に携わりたい」または「独立してウェブ解析で生計を立てたい」という方に向いた資格となり、初級・上級の延長線上で考えないようにしましょう。

 

 

マクロレポートについて

マクロレポートとは一言で言ってしまえば、いわゆるクライアントなどに提出するウェブサイト(及びその周辺)を分析した上での改善提案資料になります。こちらを作成して提出し、マスターの方の採点を受けて合格すればクリアです。

 

ちなみにマクロレポート(及びミクロレポート)はマスターが採点しますが、どのマスターが採点したかは非公開となっています。また採点するマスターの方にも、誰のレポートかはわからない形になっています(なので資料にも名前などは入れません)。昔はどちらも公開だったようですが、いろいろと問題があったようです(笑)。やはりコメントの中には辛辣なものも多く、そのフィードバックを受けた人が、直接マスターに問いただす・・・みたいなことも起きかねないですからね。

 

改善対象のサイトは「ウェブ解析士協会」のサイトとなります。以下は私が作成したマクロレポートになります。

 

※数値は隠しております

※抜粋版となるため、全体の40%程度の内容です

 ※また、過去のマクロレポートなどを参考に作成しているため、普段私がコンサルティングで作成しているレポートとはフォーマットは違います。


 

www.slideshare.net

 

ミクロレポートについて

ミクロレポートは、ゴールに対しての改善提案とは少し違います。ペルソナや仮説などを元に、特定の一人のユーザーをピックアップして、そのユーザーを想像し、ユーザーのサイト内での行動を追いかけた上で、その人を幸せにするための提案になります。そのためビジネスインパクトという観点ではなく、ユーザーが離脱してしまう、悩んでしまうところを解決するための施策を出すという形になります。

 

マクロレポートとはまた違った形での施策洗い出しや、サービス理解が出来るので新たな視点を加える上では有効なレポートです。ちなみに私は今回はじめてミクロレポートというものを作成しました。この中にあるそれぞれの要素を普段の提案から活かすということはやっていますが。

 

こちらも説明より見たほうが早いので内容を御覧ください(注意書きはマクロレポートと同じです)。

 

www.slideshare.net

 

 

追記:ミクロレポートで取り上げた会社の方が、

後藤塾 | ウェブ解析士認定講座で最も多くの講座を開催し、最も高い合格率のウェブ解析士認定講座を主催している後藤塾サイト

で上級ウェブ解析士の授業を受けられたようです!後藤さんと先方に許可いただいた上で、私のミクロレポートを共有した所、かなりプロファイリング正確だったようです(笑)

 

そしてその後、私の方で主催した以下のイベントに来ていただくという奇跡の出会い!なんとも驚きのサプライズでした。

 

【2016/09/03 無料&初心者大歓迎!】解析相談&アナログゲーム大会

 

 

マクロレポート及びミクロレポートで合格するためのポイント

・全体の流れをわかりやすく(目次と最初にサマリーを追加することをおすすめ)

・施策に関しては、必ず仮説・それを裏付けるデータを用意する

・また施策はオンラインだけにとどまらない。オフラインの施策も必須

・アクセス解析以外のデータやアンケート調査などのデータも活用しましょう

・施策の想定改善インパクトは(常識の範囲内で)最低限のロジックを書くことが必要

・色使いや誤字脱字、レイアウトなどもチェックされますのでしっかりチェックを(別の人にチェックをしてもらうことが大切)

事務局から簡単にフィードバックをもらう事ができるので、締め切り数日前に共有することが大切

・Facebookグループでもどんどん共有してフィードバックをもらう、他の人にフィードバックする

・特に枚数制限はありませんが、少なすぎ多すぎずのイメージです(多分30~60ページあたりかなと)

過去のマスターの資料などを入手するのはOKなのでお願いする(ウェブ解析士マスター受講者の方は連絡いただければ、数値ありの正式版を私からも出すことが可能です)

 

あたりですかね。採点された後に、各マスターのコメントも(全員に)共有されるので、不合格の場合は必ずその内容を確認して次回提出時までには修正しましょう。修正しないと(多分)評価は変わりません。

 

ちなみに筆者の場合は、マクロレポートの作成時間が15時間+再修正で5時間、ミクロレポートも15時間かかりました。最低でも上記の時間は確保しましょう。締め切りは次回講座の3営業日前まででした(この辺は今後変わるかもですが)。

 

 

実技試験について

実技試験は基本的には、他の受講者+審査員(ウェブ解析士マスター)の前で発表を行うという形になります。私が受講した時は、1人3回発表を行う形でした。具体的には

 

1)ウェブ解析士マスター上級の講座資料の特定のページ(場合によっては複数ページ)について発表を行う(資料投影あり・マイクもつ・ホワイトボード利用あり)

 

 2)ウェブ解析士初級でよく出てくる用語(事前に数十個が指定されます)の中から指定された1つの用語を説明する(資料投影なし・マイクもたない・ホワイトボード利用必須)

例)DSP・アドネットワーク・IPアドレス・ROASなど

 

3)Google アナリティクス初級(あるいは上級講座)から指定されたキーワードやお題を説明する(資料投影なし・マイクもたない・ホワイトボード利用必須)

例)セグメント・フィルター・直帰率の改善方法・GTM・他Googleプロダクトとの連携

 

の3つテーマそれぞれについて発表するというものです。3)については今回はじめて追加されました。

 

 

評価と合格のポイント

評価ポイントは4つにわかれています。配分や合格基準などは非公開です。

 

■姿勢

前を向いて話をしているか、落ち着いているか、紙に向かって話していないかなど

 ■内容の正確さ

正しく理解して説明をしているか・誤った内容を伝えていないかなど

 ■言い切り

曖昧な言葉を使っていないか、この内容が何故大切なのかが伝わっているか、具体的にどういうアクションをして欲しいかを伝えているかなど

 ■事例

説明をする際に適切な事例を用意出来ているか、わかりやすい具体例を提示できているかなど

 

 

合格ポイント

・受講者同士で集まって事前リハーサルの時間などを確保したほうがよいでしょう

↓本番前々日の練習会の様子

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・資料やアンチョコなどをそのまま読まない

・内容を読むのではなく理解することが前提

 ※基本は何も見ずに発表出来る状態にすることが必要

・ホワイトボードを使う際に具体的に何を描くかは事前にすべて決めておいたほうが良い

・またできれば説明しながら描けるようになることが理想。全部最初に描いてから説明しないほうがよい

・とにかく言い切る「思います」「ではないでしょうか」「と感じています」などの言い方をすると基本落ちます

・声を張りましょう。下を見るのではなく、部屋の一番後ろに目をあわせて、声を届かせるイメージで

・ここで合格する=お金をいただき、登壇して解析士を育成する資格を得るということなので、その観点で見た時に自分はそこまで達しているのかがもっとも大切。自分の話している内容に確信と自信がなければ、受からない可能性が高いです

 

 

 

筆者から見たマスター講座の改善ポイント

今回、マスター講座を受けてみた、ウェブ解析士協会として以下の内容についてはぜひ見なおして欲しいあるいは検討してほしいなと感じました。

 

マスター講座で求めている物と受けている人のニーズが必ずしもあっていないと感じました。「初級や上級解析士を増やすための教育や浸透」という視点が比較的多い講座でしたが、それを実際に合格後に全員が実現できるか(あるいは実現しているか)というと難しいのが現状ではないでしょうか。

 

大変だとは思いますが、「ウェブ解析士マスター プロフェッサー(教育者)」と「ウェブ解析士マスター コンサルタント(実践者)」に分けたほうが良いのではと感じました。現在の講座は前者が7割・後者が3割くらいの配分で、少しもったいないです。

 

・例えば「プロフェッサー」であればより具体的なコーチングやプレゼンテーションテクニック、資料の作成方法を教えたほうが良いと感じました。その上で試験は30分ほどの模擬講座を開いて(資料も自分で作成して)発表・評価するというのがどうでしょうか?

 

・「コンサルタント」のほうも、ヒアリング・レポート作成・改善提案・振り返り・運用レポート作成など、より実践的な内容にしてしまい、無料で提案するので、データ提供に協力してくれる企業に対して、実際に提案するところまで取り組めると、よりビジネスに活かせるのではないでしょうか。

 

 

■マスター講座自体の資料は改善の余地がいろいろありそうです。内容をいろいろ変えながら実施しているかとは思いますが、レポートで評価されるということは、逆に言えばマスター講座の資料もそれなりにレベルに達していて欲しいなとは感じました。この辺は言動不一致感を与えてしまいます。

 

 ■基本的には「崖に突き落とすから這い上がって来い」スタイルの講座という印象でした。この方法は、受講生同士の連帯や充実感は生まれるものの、受講生任せになってしまう部分は否めないかなと。そのため、受講費に見合っているかというの良くも悪くも判断しにくいという印象はあります(その後の活躍次第の部分もありそうですが)。

  

■後は江尻さんしかマスター講座を開催できないというところはやはり今後変えていかないとですね(開催場所や回数が制限されてしまうため)。少なくとも複数名で回せる環境があると良さそう。この辺は簡単では無いとは思いますが。。。

 

一番最初に書いた項目が、特に検討していただきたい内容です。

 

 

最後に

今回はウェブ解析士マスターを受けるという機会をいただきありがとうございます。

 

ウェブ解析士協会・採点などに携わっていただいたマスターの皆様にも感謝しております。そして、同期(36期)の皆様と一緒に議論しながら、練習しながら進められた事は楽しい時間でした。皆さんや採点者のマスターの皆さんと接点をもてることは一つ大きな財産であり、この講座の魅力でした。

 

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ウェブ解析士の認知度が上がっていく中、ここから更にウェブ解析士の価値を高めるために、今後更なる発展に期待すると共に、私もご協力が出来れば幸いです!

 

 

www.web-mining.jp