アクセス解析ツール・アンケート・ユーザーインタビューなどサイトに訪れた人の行動や思いを手に入れて分析する方法は多岐に渡ります。アクセス解析ツールからはサイト利用者の行動を細かく追いかけて分析できます。アンケートは、一定量以上の人数に対して意見を募うことができます。ユーザーインタビューでは対話などを通じて具体的な意見や思いを引き出すことができます。
どの手法も情報を元に、会社・サイト・サービスを改善するために使うことが目的です。それぞれのメリットやデメリットがありますが、2015年1月に登場した「ONI Tsukkomi」は、サイトやページに対して直接、被験者がツッコミを入れるという今までにないサービスとなっています。
ONI Tsukkomiに関する記事やインタビューは以下のサイトでも確認できます。私の方ではツールの紹介と活用方法を中心に紹介いたします。
サービスの概要
被験者がONI Tsukkomiから発行されたURLにアクセスされると、ツッコミを入れて欲しいページにアクセスできます。ページ内でツッコミを入れたいところを選択して、コメントを書き込んでもらう。2行でまとめるとこんな感じになります。
後は管理画面で、ツッコミを確認し、それらをグルーピングしたり、評価したり、BackLogと連携してタスク化したりなどができます。
被験者に関しては自分達で改修することも可能ですし、ONI Tsukkomiを提供している株式会社リンクライブが保持している100万人のモニターを対象にすることが可能です。
利用開始までの流れ
アカウントを取得したら、まずは新規プロジェクトを作成しましょう。基本的な情報を入力すれば完了です。
入力後はツッコミをもらうページの設定を行います。複数のページを設定する事も可能です。
これで基本的に設定は完了ですが、対象ユーザーをセグメントにわけてツッコミ依頼あるいは配信を行う場合は、セグメントを複数設定しておきましょう。セグメントごとに依頼するときのURLが生成されるため、後でセグメントごとの集計や分析を行なうことが可能になります。
設定が完了したら、後は被験者にツッコミを入れてもらうためのURL画面でURLを取得し、メールやソーシャルメディアなどで共有しましょう。
こちらのURLにアクセスすると、ツッコミを入れられるページが表示されますので、後はツッコミをどんどん入れていくという形になります。これが登録から依頼までの一連の流れとなります。
なお、URLにアクセスすると以下のようなページが表示され基本情報を入力した後に、ツッコミを入れるという流れになります。
また初めて開いた場合は、操作方法も動画で紹介されます。
レポート画面
得られたツッコミを確認・分析・施策につなげるための各種レポートを確認してみましょう。ONI Tsukkomiのレポートは主に5つに分かれています。それぞれを確認していきましょう。
- 1:ダッシュボード画面
全体のサマリーを確認することができます。
ここでは「参加ユーザー数(回答人数)」、「獲得ツッコミ数(回答数)」、「分類や課題化(後述)を行った回答の割合」、「抽出を行った課題数」を確認することができます。またページ単位の回答や分類進捗状況も一画面で確認出来ます。
- 2:ツッコミ確認
ツッコミを画面上で確認できます。ページ上に直接吹き出しを表示しているため、どこに対してツッコミが行われたかを確認できます。
全てのコメントを同時に評価したり、その内容を元に役立ち度合い(○・△・×)をつけたりする事も可能です。
インタラクティブかつ使いやすい内容となっています。最も時間を過ごすレポートでもあるし、改善の参考になるものを沢山発見出来るのではないでしょうか。また、この画面で評価・セグメント・期間でのセグメントなども可能です。
複数ページでテストをしている場合や回答が多い場合は、ページ上で見るのが大変な場合もあります。その際には、「一覧表示形式」に変えると、表形式でツッコミを確認できます。ただし、一覧表示形式ではページはわかるものの、ページ内の場所はわからないので2つを併用していきましょう。
- 3:グルーピング・課題化
本ツールの目的はツッコミを集めてサイト改善に活かすことだと思われますが、ただツッコミを集めて終わらないのがツールのウリです。こちらのツールでは、得たツッコミを改善に活かすための機能も用意されています。
「課題」を作成して、その中にツッコミを入れることが出来ます。ツッコミをもらって終わるだけではなく、ちゃんとそれを課題に昇華する事が可能です。以下の画面をご覧ください。
左列に未分類の課題があり、中央列に作成した課題とその中に入れたツッコミがあります。最後に見送るものに関しては一番右の列に追加します。ツッコミをポストイットなどに書いて、それをホワイトボードで分類するようなイメージですね。残念なのは、ツッコミをドラッグ&ドロップで移動出来ないことです(クリックしてからどこに入れるかを選択するという形です)。ぜひ作業の効率化のためにも、これは対応してもらえたら嬉しいです。タブレットどかでの操作もしたくなるので。
- 4:対応方針決定
課題をグルーピングして終わらないのが本ツールの良い所です。課題ごとに担当をアサインしたり、プロジェクト・タスク管理ツールであるBackLogとも連携することが可能です。
これによって、誰がこの問題を対応するかが明確になり、貴重なツッコミを放っておくという事が減るのではないでしょうか。こちらに関しても運用の事を考えると、対応する・対応しないを見ることが出来るのは良いのですが、「対応完了」に関しては本ツール内で選択出来ると良いかなと思いました。
BackLogを使っていない企業もいるでしょうし、どれくらい「対応したのか」を見るのは励みになります。そういった意味では最近流行りの(?)称号やバッジ機能を用意すると、改善のモチベーションが働くかもしれませんね。
○5:レポーティング
最後に本ツールには結果を報告するためのレポーティング機能が用意されています。ツッコミや課題などをCSVで出力するのは当たり前の機能ですが、なんとパワーポイント形式での出力が可能です。
出力されるパワーポイントの内容も非常に分かりやすく、このようにレポートをパワーポイントやPDFを生成するツールやサービスはいくつかありますが、その中でもトップクラスのわかりやすさでした。出力されるレポートの例は以下Slideshareをチェックしてみてください!報告業務が楽になることが実感できます。
http://www.slideshare.net/link-live/oni-tsukkomi-report201501122d77gdvv2-43429635
- ここいいな!と思った点
・各レポートにはじめてアクセスすると使い方を教えてくれます。
こういった所が後回しになるサービスが多いので、単純に素晴らしい!と思いましたし、私もこのおかげで機能を簡単にすぐに理解できました(スキップも可能)
・依頼時のサンプル文面が用意されている
ちょっとした手間の軽減になり嬉しいです!ぜひ、編集と保存機能が欲しいです。
本ツールの活用方法
ツッコミというアクセス解析などでは取得しにくいデータを入手出来る。これを正しく活用するためには、ツッコミを取得するだけではなくその後の改善も意識した上で対象ページや内容を決めることが鍵なのではないでしょうか。
闇雲に全てのページをテストするのではなく、アクセス解析ツールのデータ・社内での議論結果・手を入れやすいなどを元に適切なページを決める必要があります。アクセス数が少ないページをテストしてもインパクトは無いですし、該当ページの改修自体がそもそも難しい場合はツッコミを集めても活かすことは出来ず、「へ~なるほど」で終わってしまいます。
個人的にはランディングページ、サービス・商品などを説明しているページ、本番に反映する前の新しいページなどが向いているのではと感じました。
またツッコミという内容は数値より(そして時には金額より)上長に伝わりやすい、あるいはクライアントに伝わりやすいと思っています。そのため、前述のパワーポイント出力機能などをしっかり活かして、様々な報告や資料に直接ツッコミを伝えてあげるとよいでしょう。
こういった機能があったらいいかも?
個人的な要望であり、このツールで実現することなのか?などの疑問はあるかと思いますが、書いてみますね。
・ページではなく、複数ページへのツッコミの実現
現在はあくまでもページ単位になっており遷移などはツッコミの対象外となります。そこで、複数ページを1つの導線として登録し、各ページ及び最後に全体のコメントを入れてもらうような仕組みがあると便利かなと思います。
・前後の変化を見る機能
ツッコミしたページに対して改善を行った後に、ツッコミがどう変化したかを見るための機能が現在備わっていません。ツール上でページ×施策内容×日付を登録し、その前後を簡単に見る機能があれば、改善の結果も本ツールで見ることができます。
また、ちょっと外れてしまいますがGoogleアナリティクスAPIなどを活用し、該当するページのアクセス・離脱・遷移・CV貢献などの情報が取れると、更に前後の評価が行い易いのではないでしょうか。
・ツッコミ内容の形態素解析
ツッコミの件数が多い場合にとっかかりになりやすいのが形態素解析ではないでしょうか(文章を文節に分けて出現頻度などを見る)。全体・セグメント・評価別にグルーピングをし、それぞれで形態素解析を行なうことで、ぱっとした特徴や違いを発見するきっかけになるのではないでしょうか。
- 料金に関して
「様々な使い方があり、使い方により値段が異なるので詳しくはお問い合わせ下さい」とのことでした。
担当者から伺ったお話
ONITsukkomiを開発・運営している会社の担当者の方とお話する機会がありましたので、そこで得た情報を記載しておきます!
・使い方の流れとしては アクセス解析ツール⇒ヒートマップツール⇒ONI Tsukkomi⇒A/Bテストという形を推奨したい。改善案の精度や、ABテストの案を作るためにも非常に参考になる。
・ECサイトなど商品を取り扱っているサイトや情報系のサイトでの利用が多い。最近はLPでも利用も増えてきている
・サイト全体にいきなり入れるのではなく、ボリュームが多くコンバージョンに影響を与えるような商品や物件詳細ページなどから導入をオススメする
・使いやすいパワーポイントのひな形は、代表の澤村氏が以前、野村総合研究所でコンサルタントとして働いていた時の知見が反映されていtる。
・複数ページをONI Tsukkomiのツッコミ対象として設定し、一連の流れで被験者にテストを行ってもらうことも可能
・スマートフォン版に関しては近日(4月中には)対応予定
・様々なコメントをもらった後に、どう対象するべきか?は悩ましいところだが、まずはツッコミが多いエリアから対応していく事が大切。まずは改善施策を反映してPDCAサイクルを回すことが大切
・変わった面白い使い方としては、ヘルプページに電話サポートの人がツッコミを入れるという利用方法がある。電話を受けた時に、お客様とやりとりをしながら、実際にサイト上のヘルプページに行き、「内容がわかりづらい」「不足している」などのツッコミを入れている。それを元にヘルプページの改善を行っている。
・今後さらに利用の幅は広がってくると思う。ツッコミを入れてくれた人にサイト内のポイント付与なども可能ではないか。
最後に
アクセス解析だけではわからない。だけどユーザーテストやアンケートも大変。またページを見てもらった評価して欲しいといった、様々な情報収集ツールの間、あるいは隙間を埋めるとても良いサービスだと感じました。前述のとおり、何でも取れば良いというわけではないのですが、サイト改善の一つの新しい情報源として、上手く使えばアクセス解析・ユーザーテスト・アンケート以上の改善効果が出せるのではないでしょうか。利用目的とその後の改善イメージを事前に想定しておけば、サイト改善に繋がる新しいサービスではないでしょうか。