アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法 (インプレスジャパン)

久しぶりの書評です。日本発のアトリビューション本を読みましたので、感想を書かせていただきます。


アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

私自身は、ここ1年間業務でアトリビューションに取り組んできており、立場としては「広告主」側になります。つまりアトリビューション分析を行いながら、集客予算の最適化を行なっていく事がゴールとなっており、広告主側の観点で読まさせていただきました。


本書はアトリビューションにまだ馴染みがない方に非常に分かりやすく説明がなされています。アトリビューションに初めて触れた時に出てくる様々な素朴な疑問(「成果の配分はどうすれば良いか」「インプレッションって本当に効果があるの」「CPAをどう計算すれば良いの」)の回答をデータや実例をもって答えてくれます。


懐疑的な気持ちを持っている方も、本書を読んでいただくことでアトリビューションを自社の分析にも取り入れてみたい!という気持ちになるでしょう。しかし、本書で紹介されている「アトリビューションマネジメント」は自社だけでは行なうことが困難な内容となっています。そのため、「アトリビューション」のごく一部になりますが、まずはGoogle アナリティクスのマルチチャネル機能から活用してみることを個人的には推奨したいです。

本書を読んで、自分の考えを改めた部分が一つありました。「アトリビューションでの最適化を行う前にセッション単位での最適化を行なうべき」という考え持っていましたが、本書を読んだ事でセッション単位の最適化は返ってマイナスを産んでしまう部分もあるのではと感じました。つまり、直接効果は無いけど間接効果が高い施策を既に掲載停止しているというものです。

セッションでの最適化を行なっている=「直接効果は悪いけど、間接効果は良い」という施策が既に消されている


という状態になってしまい、改善の余地を自ら無くしてしまっている事を意味します。これは非常にもったいないことです。



そういった事もあり本当は、集客を行なっている全ての会社にアトリビューションマネジメントに挑戦して欲しいと考えています。しかし、難易度やコストの問題もあるので、スモールスタート(少額予算)で広告の停止・出稿を調整してみたり、本書を通じて知見をためておきましょう。



本書の内容に戻りますと、巻末の9名によるコラムもオススメです。それぞれ違う立場からアトリビューションの可能性と課題を説明しています。現場の言葉が多く含まれているコラムをぜひ読んでいただき、皆さんの判断の参考にしていただければ幸いです。



私も現場担当者としての苦労を書かせていただきました。




本書で印象的だったフレーズをいくつかピックアップしてみました。

・潜在的に興味がある層に対してディスプレイ広告などで意図的に働きかけ、「検索の意図を作る」

・第三者配信アドサーバーは自身で広告配信を行っているので、インプレッション後、つまり広告を「見た」瞬間からの広告測定が可能となる。

・もし、バナーを閲覧してから、ごく短期間に検索して、コンバージョンに至っているデータが多ければ、閲覧と検索は密接であると考えられる。

・(フレーズではないのですが)CPAとアトリビューションも加味したトータルCPAの散布図は非常に気付きが多く、良い図だと思いました。

・「モデルを一定に保つこと」が目的ではなく、「目的を達成するためにモデルという道具を使っている」のだ。

最後に

アトリビューションに関する情報はattribution.jpを中心に、私のブログでの連載検索エンジンマーケティング考での連載、あるいはMarkezine・Web担当者フォーラムといったネット上の媒体で確認する事ができます。しかし、基本から応用まで順番に説明している内容は、今のところ(日本では)本書しかありません。


アトリビューションに少しでも興味をお持ちの方、そして、既にアトリビューションに何かしらの形で取り組んでいて苦労されている方は、ぜひ本書を読んでみてください。必ず気づきや、考えの参考になる情報があります!

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法