「アトリビューション分析」連載 その4:アトリビューション評価に必要なデータ その2

本ブログでのアトリビューション連載第4弾です。今回はアトリビューションを行うために必要なデータを紹介いたします。

【バックナンバー】
「アトリビューション分析」連載 その1:アトリビューションとは?
「アトリビューション分析」連載 その2:アトリビューション評価の難しさ
「アトリビューション分析」連載 その3:アトリビューション評価に必要なデータ その1


前回はアトリビューション分析を行うために必要なデータという事で、「ユーザーの行動」に関するデータを紹介いたしました。


前回、書き忘れてしまったのですが、今回紹介しているアトリビューション分析はGoogle Analyticsのデータでは基本出来ません。Apache型あるいは、タグ型でローデータ(1アクセス1行のデータ)が必要となります。ご了承下さい*1


今回はもう一つのデータ「コストと収益」に関するデータです。


コストと収益

アトリビューションの効果をコストと収益無しに出すことは出来ます。例えば、ある流入Aは、初回流入に5回効いて、成果が発生したコンバージョンに2回効いた。といった具合です。今までは成果が発生した直接成果(2件)しか評価をしていなかったため、間接効果も意識した評価が出来ます。


しかし、アトリビューション分析を行う上で、実施したい事に一つに「少ないコストで一定の成果を確保する」あるいは「決まったコストで最大の売上を確保する」というものになります。

そうなると回数のデータでは不十分です。1回の流入でも10円かかる場合と、1000円かかる場合では100倍の違いがあります。流入にかかるコスト、成果で得られる売上をしっかりと定義した上でアトリビューション分析を行いましょう。


コストのデータ

サイトへの流入にはいろいろな種類のものがあります。自然検索、リスティング、バナー、アドネットワーク、メールマガジン、参照ドメイン(自然検索以外の無料流入)、ノーリファラーなどなど。また、それぞれに対してリンクがあります。メールマガジンであれば、メールマガジンごとのリンク。バナーであればバナーごとのリンク。それぞれ流入コストが違うはずです。


リンク1本づつ金額をつけていくと、非常に時間がかかり大変です。また、リンク単位で金額を出せないものがあるかと思います。取得するコストのデータは「施策を打てる単位」である事が大切です。


たくさんのキーワードを扱っているリスティングであれば、キーワード単位ではなくアカウント単位が良いでしょう。バナーは掲載箇所単位で消すことが出来るのであれば、バナー単位で良いでしょう。


このように粒度を決めてコストデータを出していきます。各施策単位のコストの出し方を以下の表で確認してみましょう。

施策 コストの入手元 クリックあたりコストの計算方法
スティング Adwords/Overture アカウントにかけている予算÷アカウント内のクリック数
SEO SEO対策にかけたコスト SEO対策にかけたサイト内外のコスト÷SEOでの流入数
アドネットワーク アドネットワークサービス上 配信にかかったコスト(アドネットワーク内のグループ単位)÷グループ内のクリック数
メールマガジン メールマガジン配信システム メールマガジンのあたりの配信コスト÷メールマガジンのクリック数
アライアンス アライアンス先 アライアンス提携にかかったコスト÷アライアンス経由のクリック数

「集計期間の金額 ÷ 集計期間のクリック数」で計算を行います。どれくらいの集計期間を見るべきかは、次回の連載で紹介いたします。


参照ドメイン 及び ノーリファラーに関しては基本コストがかからないので、コストは0とします。ただしコストがかからないものに関しては、アトリビューション分析をしても意味が無いので(最適化・最大化が出来ないため)無視します。


これらを計算すると以下のようなデータが出てくるはずです。
集計期間:直近6ヶ月

例)メールマガジン
6ヶ月でのメールマガジン配信数:25回
配信システムの利用料:1メルマガあたり5,000円
配信コスト=25×5000=125,000円

メールマガジンからの累計クリック数:25,000円
クリックあたりのコスト(CPC):5円


このような形でまずはコストデータを集めましょう。


売上のデータ

売上も同じように流入施策単位で取得します。例えばSEO経由の流入が100回あり、そこからの売上が50,000円だとしたら、1クリックあたりの売上は500円となります。


ここではセッション単位での売上データを見るので、通常のアクセス解析ツールでデータは取得出来るはずです*2


売上がサイト上で発生するサイト(ECサイト)などは、アクセス解析ツール上で購入時に金額も取得していれば、精度高くデータが取得出来ます。



(flickr@darshonline)


ECサイトでも売上を取得していない、あるいはサイト上で売上が発生しない場合は、「期待売上」あるいは「平均売上」をセットする必要があります。資料請求サイトを例に考えてみましょう。


サイト上での資料請求が100件あるとします。このうち2件が実際に契約となり、契約あたりの売上が50万円とします。この場合に手に入れられる売上は50万円×2=100万円。1資料請求あたりの「期待売上」は100万円÷100=1万円 となります。これが1資料請求あたりに手に入る金額として利用します。


ECサイトで購入単位で値を取得していない場合は、月の売上から、購入回数を割り算して、1件あたりの平均売上を計算しましょう。


複数成果があるサイトの場合は、それぞれごとの「期待売上」や「平均売上」を算出しましょう。


まとめ

コストと売上のデータを取得する事で、はじめてアトリビューション分析を行うためのデータが揃います。コストのデータ入手は手間なものもあるかと思います。まずは手に入る範囲でデータを入手しましょう。



次回は実際のデータ取得及び加工に入る前に、アトリビューションの「モデル」を紹介する予定です。


【バックナンバー】
「アトリビューション分析」連載 その1:アトリビューションとは?
「アトリビューション分析」連載 その2:アトリビューション評価の難しさ
「アトリビューション分析」連載 その3:アトリビューション評価に必要なデータ その1

*1:GoogleAnalyticsでは機能としてアトリビューション分析が出来るものを用意しているようです。使えるようになり次第、本連載でレビューいたします

*2:アトリビューション分析ではこの売上を、流入回数や流入タイミングによって分配していきます