「ユーザーのサイト利用期間と行動変化」を分析してみる

今回紹介するのは、「ユーザーがサイトを利用する期間と、その間にどのような行動を取っているのか?」を調べる分析手法です。


サイトの種類にもよりますが、初めてサイトに来るユーザーと、サイトへの訪問が3回目のユーザーではサイト内の行動パターンが違います。

例えば転職サイトであれば、1回目は会員登録。2回目は企業検索とそれらを会員ページでクリッピング(ブックマークのような物)。3回目以降にエントリー開始。と、このように行動様式が変わってきます。


こういった情報をアクセス解析データから取得し、それを改善施策に活かす事が目的です。


※作業的に面倒な部分もあるので、まずは流し読みをしていただいて、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。今まで見えてこなかった情報や改善プランが見えてくると思います。

この分析手法を使うと、以下のような事がわかります。

Aという転職サイトは

  • 新規訪問者の多くがまずは特集を閲覧する。検索エンジンからの流入が大半
  • 2回目の訪問(平均して最初の訪問から3日間)で会員登録を行う
  • 3回目の訪問が一番レジュメの入力比率が高い
  • 最初の訪問から1週間は検索を良く行っていて、エントリーはあまりしない
  • 最初の訪問から2週間〜4週間がエントリーのピーク。またこの頃から検索ワードによる流入比率が大幅に下がる
  • 最初の訪問から1ヶ月〜2ヶ月はあまりエントリーが行われない。面接の身だしなみや注意点といったコンテンツが読まれる
  • 最初の訪問から2ヶ月〜3ヶ月で改めてエントリーが集中する。ただしエントリー頻度は最初の1ヶ月と比べて少ない
  • 90%以上の訪問者は3ヶ月以上サイトを利用していない。3ヶ月でサイトに訪れる平均回数は20回である。

このような情報が得られれば、施策の打つタイミング、メールマガジンのターゲット配信、サイトのコンテンツの出し方、会員ページで出す特集バナーの内容の入れ替え、などサイト改善に使える情報を多く得ることが出来そうです。というわけで、手法は以下の通りですが、その前にアクセス解析ツールに必要な前提をお話しします。



分析を行うにあたって、アクセス解析ツールに必要な条件


→特定の条件を元に、セグメンテーションを行い様々な集計を行える機能 あるいは クロス集計して表形式でそれを表示する機能を持っている
Google Analyticsでは「アドバンスドセグメント」として提供されている機能ですね。他のツールでも、以下のような情報を見ることが出来れば、今回の分析手法が使えます。

  • 新規ユーザーやリピートユーザーの「流入検索ワード」が取得出来る
  • 初回訪問から2ヶ月以内ユーザーの「閲覧ページ」が取得出来る

※以後、画像はクリックして必要に応じて拡大をしてください
GoogleAnalyticsの例


Visionalistの例



分析手法

この分析手法は、ECサイト・就職関連のサイト・サービス販売サイトなどコンバージョンがあり、そこにたどり着くまで一定期間かかるサイトの分析に向いています。ブログをはじめとする、コンバージョンが特に無いサイトに関しては向いていません。


STEP0:サイトの仮説立てを行う

STEP1:新規訪問者のデータを取得する

STEP2:2回目訪問、3回目訪問といった、訪問回数を条件にいくつかデータを取得する

STEP3:初回訪問からの日数(あるいは月数)といった、日数を件にいくつかのデータとして取得しておく

STEP4:それらデータを比較して特徴を洗い出す



STEP0:サイトの仮説立てを行う

今回の分析の範囲を決めるために、サイトに関するいくつかの問いに対しての答えを考えてみましょう。


1)コンバージョンして欲しいページに「初めて」たどり着くまで、どれくらいの期間 及び 訪問回数がかかりそうか?
例A:パソコンを販売しているサイトであれば、訪問回数3回、期間は1ヶ月。
例B:新卒向けの就職サイトであれば、訪問回数2回(会員登録、レジュメ入力、エントリー)、期間は半月。


2)サイトの利用が完了するまでの期間 及び 訪問回数はどれくらい?
例A:パソコンを販売しているサイトであれば、訪問回数3回、期間は1ヶ月(上記と一緒。パソコンを購入した時点でサイトの利用が通常完了するため)
例B:新卒向けの就職サイトであれば、訪問回数100回、期間は9ヶ月(就職活動の期間は使い続けるため、複数回のコンバージョンが発生する)


1)と2)の数字が、今回の分析範囲となります。

もしわからなければアクセス解析データから「新規訪問者比率+2回目訪問者比率+3回目訪問者比率+・・・」と足していき、90%を初めて超えたときの訪問回数や期間を算出して数字を出してみましょう



STEP1:新規訪問者のデータを取得する

今回はGoogle Analyticsスクリーンショットを使いながら説明いたしますが、他のツールでも必要な条件さえ満たしていれば分析可能です

・まずは新規訪問者のセグメンテーションを作りましょう(GoogleAnalyticsの場合デフォルトで作られているはずです)


・そのセグメントに対して、集計したい期間で以下のデータをダウンロードしておきましょう。★マークがついているものは特にオススメです。

★キーワード(上位100件程度)
★閲覧ページ(Google Analyticsでは上位のコンテンツ あるいは タイトル別のコンテンツ) ベスト100あたりをオススメします
閲覧開始ページ
離脱ページ
★サイト内検索ワード(もし取得していれば)
★コンバージョン数
参照サイト
セッション数
ユーザー数(Google Analyticsでは取得不可)

例)キーワードのデータ

「集計したい期間」に関しては前述のサイト利用期間を元に設定しましょう。あまりに期間が長すぎる場合は、季節変動が無く利用されるサイトであれば、1ヶ月〜3ヶ月くらいのデータでも問題ありません。前述例の就職サイトでは季節要因が大きいので9ヶ月分のデータが必要になります。


・ダウンロードしたデータを元に「条件にマッチするセッション数での比率を算出」

例)キーワードのデータ

キーワードでの流入数 ÷ 新規セッション数 という計算を行って、流入比率を計算しています。


・上記の例はキーワードですが、他にダウンロードしたデータも同じように、「閲覧ページ比率(新規の人の何%が特定のページを見ているか)」「コンバージョン率(新規の人の何%がコンバージョンしているか)」などを計算をしましょう。



STEP2:複数訪問回数のデータを取得する

STEP1と行う事は一緒です。


・まずは訪問回数のセグメンテーションを作りましょう。(Google Analyticsではセグメントの条件として「セッション数」を選び値を選択しましょう)

・セグメントした単位で、上記で紹介したデータのダウンロードと計算を行いましょう。

例)閲覧ページのデータ

見るべき訪問回数ですが、前述の「最初のコンバージョンまでの訪問回数」と「サイトの利用が完了するまでの訪問回数」を上限に、刻んで集計しましょう。

例えば、最初のコンバージョンまでが3回、サイト利用期間が7回であれば
1回・2回・3回・4回〜5回・6回〜7回 あたりが良いかもしれません。



STEP3:初回訪問からの日数のデータを取得する

STEP1と行う事は一緒です。


・まずは初回訪問からの訪問日数のセグメンテーションを作りましょう。*1


・セグメントした単位で、上記で紹介したデータのダウンロードと計算を行いましょう。

見るべき訪問からの訪問日数ですが、前述の問いの答えを元に「最初のコンバージョンまでの訪問期間」と「サイトの利用が完了するまでの期間」を上限に、刻んで集計しましょう。

例えば、最初のコンバージョンまでが3週間、サイト利用期間が3ヶ月
初回・2日〜3日・4日〜7日・1週間〜2週間・2週間〜3週間・3週間〜1ヶ月・1ヶ月〜1ヶ月半・1ヶ月半〜2ヶ月・2ヶ月〜3ヶ月 あたりが良いかもしれません。



STEP4:データを比較して特徴を洗い出す

STEP1〜STEP3を行った結果、以下のようなデータが得られたとします。


例)検索ワードと訪問回数の関係
%は該当訪問回数に置ける、全流入の比率です


データをだいぶ簡略化しているのでわかりやすいかと思いますが

・初回訪問や2回訪問目の訪問は「転職」といったビッグワードで流入をしている
・3回目の訪問になると「履歴書」関連のワードでの流入が増えてくる
・4回目の訪問になると「面接」関連のワードでの流入が増えてくる
・全体的に検索ワードでの流入比率が減ってきている

といった情報が得られるかと思います。この情報から、ユーザーが訪問回数を重ねるごとに「転職のステージを進んでいる」そして「検索流入ではなく、それ以外の流入(別途調査して見たところ、ブックマークやメルマガ経由の流入)が増えている」という事が推測できるかと思います。


このように検索ワード×訪問回数の関係を見ることがいろいろ参考になる情報が得られました。


また別の例を見てみましょう。


例)閲覧ページと初回からの訪問日数の関係
%は該当訪問期間に置ける、全流入の閲覧比率です(1訪問で複数ページを見るので合計は100%以上になります)


データをだいぶ簡略化しているのでわかりやすいかと思いますが

・サイトに滞在する時間が長いほどTOPではなく会員TOPを見るようになるが、1ヶ月を超えると減ってくる
・メルマガ登録はサイトへの訪問が2回目から2週間以内に集中的に行われている。それ以降はかなり減る
・履歴書、面接、年収500万以上特集は良く見られている時期が傾向として出ているが、職種関連の特集は期間関係なく定期的に見られている
・企業エントリーは初回から1週間以内〜1ヶ月以内に集中している
・サイトでの活動期間は大体1ヶ月以内くらい?(期間ごとの訪問回数分布とあわせて確認しましょう)

といった情報が得られるかと思います。改善施策に活かせそうな情報がいくつか発見出来るかと思います。


こんな感じで自分のサイトのデータもいろいろ分析してみましょう!

注意:
簡略化してデータを出しているため、わかりやすい表になっていますが、実際はもうちょっと複雑です。検索ワードや閲覧しているページなどは、100〜300くらいのリストを用意した方がいいと思います。またポイントは全体的によく見られているようなページを見るのではなく、アクセス数が膨大でなくても、比率変化が大きいところを見ましょう。


例えばAというページは、初回訪問者の2%が見ていて、二回目訪問者の5%が見ている場合、「初回と2回目ではAページを見る比率が2.5倍も違う」と言えます。元の母数にもよりますが、これは充分に有意な差で改善に使えるかもしれません。


また複数のデータを並べて見ることも大切です。一つの表だけから結論を出すよりは、今回作った複数の表やデータを元に判断を入れていった方が良いです。



具体的な施策を考えてみる。

上記の転職サイトを例に考えてみましょう。今回得た情報から、私だったら以下の施策にチャレンジしてみます。


1)メルマガのコンテンツを全員同じにするのではなく、メルマガ登録からの日数にあわせてコンテンツを変える。
例えばメルマガ登録直後は「履歴書の書き方」とか「年収500万円以上」のコンテンツをメルマガの一部にコンテンツとして用意し、クリックとエントリーを促す。
登録から2ヶ月くらいたった時には、全体的に比率が落ちない「事務特集」や「営業特集」などを案内。
2ヶ月以上たった後はサイト利用がほぼ終了していると仮定し、今後のサイト改善のために「サイトの利用勝手」アンケートなどを出してみる。


2)TOPページと会員TOPページのコンテンツを明確に分ける
TOPページは新規の人の会員登録やメルマガの案内、そして新規の人に響くキャッチワードや特集をわかりやすい位置に配置する。
会員TOPページでは、面接やエントリーに備えるための特集を中心に、企業エントリーの仕方や企業のピックアップを行う。


3)各ページの右上に特集バナー枠を用意し、Cookieの訪問回数を見ながら特集を出し分ける
例えば3回目の訪問者は必ず「履歴書の書き方」に関する特集バナーを見せるなど


4)初回の人向けに「このページをブックマーク」するリンクを用意する
あまり効果ないという噂もありますが、初回訪問の時は、必ずヘッダーの部分に、簡単にブックマークできるようなリンクを用意しておく


ぱっと思いつくところを書いてみました。他にもいろいろなデータと組み合わせることで様々な集客及び導線の改善施策が見つかると思います。これら施策の効果を追うためには、1つずつ改善を行い、また1ヶ月後に今回出したデータと同じデータを出して比較してみると、変動要因が少なく効果がわかりやすいかと思います。



まとめ・・・・に変えて

私が過去に似たような方法で分析した結果、分かったことを書いてみます。もし、以下のような事がわかったら、どのような施策を打ちますか?ぜひ考えてみてくださいな。

サイト概要:
結婚情報を扱う総合サイトです。式場・ウェディングドレス・指輪・二次会会場などの検索&資料請求システムを中心に、結婚に関する特集や、会員登録をすると結婚までの段取りをオンラインでチェックしたり管理する事が出来ます。そのサイトでの分析結果です*2


特徴:

  • 初回訪問の多くの人は、まず「会員登録」をしたり「結婚指輪情報」を探していました。特に会員登録率は50%以上と高いです。
  • また多くの流入は「サイト名のブランドワード」での検索になります。
  • 初訪問〜サイト利用1ヶ月以内の人は、「特定の地域の結婚式場」を良くサイト内で検索します。
  • 1ヶ月〜2ヶ月の人は「ウェディングドレス」や「結婚指輪」を探します。大体一人あたり10〜20種類は見ているようです。サイト外からの検索ワードも同ワードが多いです。
  • 3ヶ月くらいの人は「二次会用のウェルカムボード」や「合唱隊やマジシャンの手配」を探します。ただし、1ヶ月〜2ヶ月の検索回数と比較すると半分くらいになっています。
  • そして3ヶ月以上たつと「エステ」とか「ネイル」とか、自分磨きの情報を中心に見ています。サイト利用1ヶ月以内の比率と比べると5倍以上の閲覧率です。
  • ほとんどの訪問は6ヶ月程度で終わります。会員ページへのログイン率やメルマガ開封率も6ヶ月を境に急激に下がります。

*1:Google Analyticsではどうやら取得出来ません。「前回のセッションからの経過日数」というセグメンテーションルールとは別です。取得方法をご存じでしたら教えてくださいな

*2:一部情報は実際の物と違うことご了承ください