サイトの『エンゲージメント』を計測する方法:今までの手法と課題

あなたのサイトに来ているユーザーが「どれくらいあなたのサイトに興味があるか」を知りたいと思ったことはありませんか?大勢の人は「はい」と言うと思います。


マーケティング業界では『エンゲージメント』という単語が1〜2年くらい前から話題になっています。様々な定義があるのです、ウェブサイトにおける「ユーザーの『エンゲージメント』」とは

「ユーザーがサイトのゴールに対して、どれくらい深くまで接しているか」


と定義出来るかと思います。*1でも、これってどうやってアクセス解析で計るのだろうか?多くの人がいろいろなアイデアを考え検討してきました。今回は今まで世の中で考えられたエンゲージメントの測定方法・指標、そして課題を紹介いたします。*2


今まで考えられた指標は以下の通り。

1)滞在時間
2)閲覧ページ数
3)ユーザー当たりの訪問回数
4)コンバージョン率
5)サイト満足度

一つずつ紹介していきます。


1)滞在時間

定義:
滞在時間=閲覧時間÷セッション数
セッションの滞在時間=(サイトの最後のページを開いた時間−サイトの最初のページを開いた時間)


エンゲージメントとの関連性:
「サイトを長く見ているセッション(あるいは人)の方がサイトのゴールに対して深く接している」


課題:
上記の定義を元に、一番『エンゲージメント』が高いユーザーはどれでしょうか?実際に『エンゲージメント』が高いユーザーはどれだと思いますか?

A)TOPページに入ってきた人が、20秒で商品のページに遷移し内容を読み始めたところ、電話がなり28分ほど電話で会話。その後、TOPに戻りすぐ離脱。サイトの滞在時間:28分20秒


B)検索エンジンで検索をした人が、あなたのサイトのTOPページを開くと同時に、違うタブで検索結果の他のページもいくつか開く。ページを順番に、時々交互に、合計1時間見て、最後にあなたのサイトから離脱する。サイトの滞在時間:1時間


C)検索エンジンを使って、あなたのサイトの店舗情報のページに横入りする。そのページの情報を印刷して離脱する。サイトの滞在時間:計測出来ず。

上記のように、長い時間サイトを見ていても、「ユーザーがサイトのゴールに対して、より深く接しているか」とは一概に言えないと思います。サイトの特性によってこの指標の有効性は大きく変わってくるため、精度としてはいまいちです。


2)閲覧ページ数

定義:
閲覧ページ数=全PV÷全訪問期間
セッションの閲覧ページ数=セッションの開始から終了までに閲覧したページ数

エンゲージメントとの関連性:
「サイト内での遷移が多い(=見ているページ数が多い)ほどサイトのゴールに対して深く接している」


課題:
上記の定義を元に、一番『エンゲージメント』が高いユーザーはどれでしょうか?実際に『エンゲージメント』が高いユーザーはどれだと思いますか?

A)検索エンジンで、あなたのサイトで販売している商品の、資料請求ページに横入りする。そこに記載されているメールアドレスをクリックし、Outlookを開く資料請求のメールを送る。閲覧ページ数:1


B)あなたのサイトで販売している商品の詳細ページを閲覧し、他にも10個の商品ページを閲覧してサイトから離脱する。閲覧ページ数:10


C)あなたのサイトで販売している商品を作った人の開発インタビュー5ページを読み離脱する。閲覧ページ数:5

上記のように、サイト内で多くのページを見ても、「ユーザーがサイトのゴールに対して、より深く接しているか」とは一概に言えないと思います。サイトの特性によってこの指標の有効性は大きく変わってくるため、精度としてはいまいちです。


3)ユーザーあたりの訪問回数

定義:
ユーザーの訪問回数=そのユーザーがサイトに何回訪れたか
平均訪問回数=訪問回数÷ユーザー数

エンゲージメントとの関連性:
「サイトに訪れる回数が多いほどサイトのゴールに対して深く接している」


課題:
上記の定義を元に、一番『エンゲージメント』が高いユーザーはどれでしょうか?実際に『エンゲージメント』が高いユーザーはどれだと思いますか?

A)検索エンジンで、あなたの会社名のワードを検索し、サイトに流入。45分ほどかけて20のページを閲覧。3つの資料をダウンロードし、メールマガジンの申し込みを行う。ユーザーの訪問回数:1回


B)3回しかサイトに訪れたことがないが、そのたびに好意的な商品レビューを書き、公開されているブログにもコメントを残す。ユーザーの訪問回数:3回


C)あなたのサイトを使い始めて3ヶ月。毎週1回はそこで連載している記事を読むが、それ以外のページは見ずに読み終わると離脱している。ユーザーの訪問回数:14回

上記のように、より多くサイトに訪れても、「ユーザーがサイトのゴールに対して、より深く接しているか」とは一概に言えないと思います。ただしその前に出てきた二つの数字と比較しても精度は若干高いと思われます。特に来訪頻度や初回訪問間隔(サイトをどれくらい長く使っているか)や前回訪問間隔(何日ぶりにサイトに来たのか)をあわせると、エンゲージメントとの相関関係が見えてくるかもしれません。


4)コンバージョン率

定義:
コンバージョン:サイト内でユーザーあるいはセッションが「サイト内で成果としているページ」に到達する事
コンバージョン率:到達回数÷訪問回数


エンゲージメントとの関連性:
「コンバージョンしている人あるいはその回数が多い人ほどサイトのゴールに対して深く接している」


課題:
コンバージョンはエンゲージメントと深く関係があり有効な指標なのですが、上記の定義を元に、一番『エンゲージメント』が高いユーザーはどれでしょうか?実際に『エンゲージメント』が高いユーザーはどれだと思いますか?

A)数多くの商品を見て比較し、口コミも読むが商品を購入せずに結局商品を買わずに離脱。商品購入のコンバージョン率:0%


B)マーケティング情報の一部を公開しているサイトにきてその資料をダウンロードするが、二度とサイトに戻らない。資料ダウンロードのコンバージョン率:100%


C)あなたのサイトのRSSに登録し、RSSリーダー経由でサイトを100回訪れる。RSS登録のコンバージョン率:1%


D)サイトに10回訪れ、10回目にようやく商品の購入を行う。商品購入のコンバージョン率:10%

コンバージョンレートはゴールを達成する事と密接に関わっているため、コンバージョンした人あるいはセッションは、『エンゲージメント』が高いユーザーあるいはセッションと言えます。しかし、サイトの大半のセッションあるいはユーザーはコンバージョンしません。そういった、コンバージョンしていない人やセッションを一律で『エンゲージメント』が無い(あるいは低い)と言ってしまうのは暴論ではないでしょうか?


5)サイト満足度

定義:
サイト内で定性的なアンケートや質問等を行い、その結果を定性→定量に変えて、そのユーザーのサイトに対しての満足度を数値化する。*3

エンゲージメントとの関連性:
「サイトに対して満足している人はサイトのゴールに対して深く接している」


課題:
上記の定義を元に、一番『エンゲージメント』が高いユーザーはどれでしょうか?実際に『エンゲージメント』が高いユーザーはどれだと思いますか?

A)初めてサイトに来て、いくつかのページを閲覧。デザインやレイアウトに満足し、アンケートに好意的に回答。しかし、その後、二度とサイトに訪れない。サイト満足度:高い


B)あなたのサイトで最近、商品を購入したが欠陥があり、その解決方法をサイト内に探りに来た。30分かけて回答を見つける物の参考にならない。そこでアンケートに回答し、自由記入欄にクレームを入れる。サイト満足度:低い


C)サイトに訪れたユーザーが40分かけていくつかの資料を読み、ダウンロードし、メールマガジンにも登録をする。そこでアンケートの回答ページを見つけるが、時間が無く回答しない。サイト満足度:分らない

前述のコンバージョン率同様、基本的にはサイト満足度と『エンゲージメント』にはある程度の相関関係とは思われる物の、サイトの大半のユーザーの満足度を測ることは現実的ではない。エンゲージメントも満足度もサイトにとって重要な物だが、それぞれ別の意味を持っており本来は相関関係を見るより、二軸にして考えるべき内容である。



上記で5つの方法を紹介してきました。それぞれがなんとなく『エンゲージメント』と相関関係がありそうだが、例外のケースも存在する。後半の二つに関しては、前半の三つより精度は高そうだが、サイト内のセッションの一部にしか対応していないためもれる部分が多い。


では、どうしたらちゃんと『エンゲージメント』が測れるのか?次回はその『エンゲージメント』を計測出来る公式を紹介します。


どういったタイプのサイトにも使え、大半のアクセス解析ツールでその公式を解くための数字が取得出来るという便利な物です。また流入元・検索ワード・訪問回数をはじめとするいろいろな軸の中での検索も可能です。(ほんのちょっと手間はかかりますが)

つまり、以下のような質問に対して、どっちがエンゲージメントが高いかを答えてくれる公式です。

「犬」と「猫」どっち?
「Yahoo」と「Google」どっち?
「初めての訪問」「3回目の訪問」「10回目の訪問」どっち?
リンク元無し」「リンク元あり」どっち?
「検索ワードあり」「検索ワード無し」どっち?
「東京」と「大阪」どっち?
「特集を見た人」と「特集を見ていない人」どっち?
「メルマガ登録あり」と「メルマガ登録無し」どっち?
「商品Aを買った人」と「商品Bを買った人」どっち?

次回をお楽しみに!

*1:あくまで私の定義です。明確な定義が無く、世の中でも使われている言葉なので、上記の定義に関しては、ユーザーとサイトという二つの条件を設けた中での意味になります。

*2:本記事は「Our white paper on Visitor Engagement is now available」(http://blog.webanalyticsdemystified.com/weblog/2008/09/our-white-paper-on-visitor-engagement-is-now-available.html)で公開された文章と自分の意見を元に作成しています。

*3:アンケート自体を数値化(5段階評価等)して置くことも可能。