アクセス解析に取り組んでいる私が、目指すべき役割は「interpreter」であるべき…というお話

最近いろいろな場所で相談したり、感じていたりすることです(こないだの金曜日も徳力さんとこの話題をしていました)。


from http://www.edupics.com/coloring-page-interpreter-i4589.html


まずは用語の意味から確認してみましょう。

interpreter
音節in・ter・pret・er 発音記号/ɪntˈɚːprəṭɚ|‐tˈəːprɪtə/音声を聞く
【名詞】【可算名詞】
1解釈者,説明者 〔of〕.
2通訳(者).
用例
hire an interpreter 通訳を雇う.
3【電子計算機】 インタープリター,解釈プログラム.
weblioより

という意味で、赤字でハイライトした「解釈者」が最も、今回の内容において適切かと思っています。では、ここからちょっと長めの前説です。


そもそも、アクセス解析とは

アクセス解析というのは、「サイトに人が訪れた時の情報(=アクセスログ)を分析して諸々のデータを採取(して分析)する仕組み。」の事を指します。この仕組みを使って、サイトの課題と改善のヒントを見つけることが出来るのではということで、認知が広がり、各種ツール・分析手法・それらをまとめた書籍が出てきたりというのが「アクセス解析」におけるここ5年〜10年の進化です。


改めてこのプロセスを4つに分解すると

1)必要なログを取得すること
2)取得したログをわかりやすい形に整形し可視化すること
3)可視化した情報を分析/解釈して気づきを見つけること
4)得られた気づきを元に、サイトを改修し、その効果を確認すること


にわける事が出来るのではないでしょうか。


それぞれのプロセスの現状を確認してみましょう。

1)必要なログを取得すること

現在の主流は大きく分けて2種類あります。ひとつは計測するための計測記述を各ページに入れる「タグ型」方式です。Google アナリティクスを中心に、PCでは多くのサイトで利用されている手法です。もうひとつは計測記述を入れるのではなく、送られてきたリクエストなどを取得し集計する「ログ型」方式です。ウェブサイトだけでは取得できないデータ、他のシステムと連携してデータを取得したい場合などに利用されており、タグ型より取得出来る情報は柔軟ですが、実装や運用の手間はログ型のほうが負荷が大きいです。

2)取得したログをわかりやすい形に整形し、可視化すること

こちらも非常に選択肢が豊富です。1)で紹介したログを取得する仕組みを提供している会社が、可視化の部分まで提供している事が多いです(いわゆる「アクセス解析ツール」です)。ログ型でも、Piwikなど、カスタマイズ性が高いオープンウェアも存在しています。またHadoopなどの大量データを取り扱い分析出来るプラットフォームも登場してきており、自前で分析の仕組みを用意することも楽になってきました。


3)可視化された情報を分析/解釈をして気づきを見つけること

分析に関しては大きく分けて2種類の考え方があります。1つ目は「アクセス解析ツール」などから得られた情報を利用してそこから気づきを見つけることです。「直帰率が高い入り口ページやワードを見つける」「成果に貢献しているコンテンツを発見する」といったツールで用意されている機能を活用して発見を行なっていきます。この部分はここ数年でもっとも進化したところではないでしょうか。沢山のツールや新しい機能の登場、書籍やオンラインの情報も沢山増えました。まだ、不十分だとは感じていますが、数年前の「ツールを導入するだけ」から「データから何かを見つける」に少しづつですが、進み始めています。


そして、それと同時にもう1つの分析の方向性が「Big Data」といった用語が今年出てきたように、「大量のデータに対して(自由に)分析をかけていく」という事です。この分野ではツールによる決まったレポートでの分析ではなく、(大量データの分析が処理能力・コストという観点で効率化したことによる、今まではできなかった)統計や分析モデルなどを利用した分析になります。


非常に期待されている分野で、統計に強い人材がこのような仕組みを導入している企業では求めらていることも強く感じます。残念ながら「アクセス解析業界(あるいはもっと広義でのウェブマーケティング業界)」と「統計業界」は今まで非常に接点が少なかったため、本格的な人材交流や、協業はこれからだと思いますが、個人的にはこちらも数年の中で、flourish(繁栄・繁盛)するのではないでしょうか。


4)得られた気づきを元に、サイトを改修し、その効果を確認すること

この部分は「進化が起きている部分」と「昔から変わっていない部分」の両方があります。進化が起きているのは、主に「解析データと施策を連動させる仕組み」です。アクセス解析ツールのデータを元にサイト内でレコメントを行ったり、バナー広告の入札に利用したり…アクセス解析との相性が良い、ウェブ上の施策との紐付きは確実に強くなっています。Google アナリティクスのここ2年くらいの機能リリースや、特に米国ではAdobe社が提供しているアクセス解析ツール内の「Genesis」という機能を利用する事で、サイト検索・メール配信を始めとする様々な他社ツールとの連携が可能です。これらの機能を利用する事で、分析から施策がシームレスに繋がるようになりはじめています。


そして変わっていない部分は、このような仕組みを使わずに、「分析したデータを元にサイトを改善する」という事をそれぞれ別の担当者や部署が行なっている場合です。上手くいかない理由は


アクセス解析担当者が、集計して得られた事実だけを伝えており、それをどう活かすかを伝えていない」
「データそのものに信頼を置いていない・データの内容が(難しくて)理解できない報告対象者」
「鶴の一声でデータに基づかないジャッジや判断が行われてします(しかも、それが結構上手くいってしまう)」
「実施した事を数値で振り替えずに、とにかく実施することだけが優先され評価されてしまう社内事情」



などがあります。



これらはどこに責任があり、どう改善出来るのでしょうか?私は責任はそれぞれにあると考えています。


アクセス解析担当者であれば、、事実を伝えるだけではなく、「それを活かすためには何をすればよいか」という提案が必要ですし(というか、施策の実施まで行うことも多々あるでしょう)、取得しているデータに対する自信や信頼性に関しては責任を持たないといけません。実施したことや分析したことをわかりやすく、見やすい形で伝えてあげるドキュメント作成やプレゼンテーションの能力も必要です。


解析者と施策担当者が別であれば、施策担当者も自分が行なっていることに対して「実施したから終わり」ではなく、「より効果があるものを実施する」ためにデータを実施前後で見る必要があるし、実施した内容を数値で報告する必要があります。また、「データを見て活用することで、施策の精度が上がる」という自信と実績が必要になります(この2つは表裏一体のものですが)。


また決裁者や意思決定者も、細かい数値までは理解する必要は無いが、その数値からどういう事実が浮かび上がってくるかを読み解ける能力は必要ですし、何よりアクセス解析担当者や施策担当者に対して、「何を求めているのか」「自分自身の判断ロジックや重要なポイント」は事前に共有し、それをできる限りぶらさない必要があります。また単純な「興味本位でのデータ出し依頼」なども、時間がかかってしまうため、なるべく避けてしまったほうがよいでしょう。



で、ここから本題なのですが

アクセス解析担当者の役割というのは、個人的には(多分、異論もあるかと思いますが)、非常に専門性が高いもの「ではない」という風に思っています。もちろん「高度な分析+ビジネスに繋がる気づきを発見する」事が出来る人や「分析から実際のデザインやコーディング」まで出来る人もいるでしょう。しかし、そのような素晴らしい人材はそれほど多くなく、かくいう私もそのような能力はありません。


私のスキルセットは以下のようなものです

プログラミング:できない
画像作成やデザインセンス:皆無


統計やモデリング:考えかたはわかるが、自分では書いたり、活用できたりしない。R と SPSSを少々。
コーディング:HTMLとCSSが出来る程度。Java Scriptもちょっと読める程度


サーバーに関する知識や設定:レンタルサーバーを使うくらいなら・・・
アクセス解析ツールを使っての分析や気づき発見なら


ウェブマーケティングに関する知識:一般的なものなら
マーケティングに関する知識:少ない
ソーシャルメディアに関する知識:基本的な知識はあるが、ソーシャルメディアで何かヒットサービスや集客を個人で実現したわけではない

インターネット広告に関して:知識としては知っているが、運用経験はリスティングとかメルマガとか
ウェブサイトの運営:複数サイトの運営知識はあるが、それをビジネスにして売上を上げていく事はほとんど実施していない


と、書いていて非常に落ち込む感じです(汗)


それでも、自分が「やっていけている」のは専門性を持っているからではなく(ここで先ほどの「アクセス解析」は専門性が高いものではない という認識が私の中にあるかもしれませんが)、いろいろな事をアクセス解析をハブに理解しており、ある分野で言っていることを他の分野に伝える事が出来るからだと考えています。


例えば「ソーシャルメディア」という観点であれば、それが「自社のビジネスやサイトにとってどういう影響があるのか、それをどういう指標で見れば良いのか」という事はわかります。また統計やモデリングに関してはその詳細は理解できなくても「何を目的に、どういう視点で分析を行なって欲しいか」を伝えて「得られた結果を、どう解釈して施策に変えて伝えればよいか」ということができます。



そんなこともあり、最近の自分は「何かしらの専門性」を目指すというよりは、「専門性がある物同士の解釈者(interpreter)」となり「繋げる」役割をになっていきたいと考えています。


アクセス解析」に置き換えると、解析ツールのデータを集計してまとめるだけではなく、「得られた気づき」「その要因」「その活用方法 あるいは 対策方法」まで伝える事ではじめてそれが実現できると考えていますし、自分が解析者 兼 実践者 であれば、そこまでやりきる事が大切なのではないでしょうか。


最後に

というわけで、ここ2ヶ月くらいで考えたいったんの自分の中での結論です。専門家は各分野にいても、まだinterpreterはそれほど多くないのではと感じており、だからこそ自分がそのような役割をいろいろなところで実現していきたいです。社内はもちろんのこと、社外での講演や連載など様々な発信の機会でも、その手助けになる情報を伝えていければと考えています。


アクセス解析」に携わっている人は、「アクセス解析」単体では何もできない反面、他の分野や業務内容との解釈役・つなぎ役にはもっともなりやすいウェブ関連のお仕事の一つなのではないでしょうか。



いろいろなご意見あるかと思いますので、ぜひTwitter/Facebook/メール/直接お会いして 更に情報交換&議論が出来ればと思っています!