アクセス解析サービスの分類と、「ダブルタギング」について


アクセス解析サービスの分類

数十種類あるアクセス解析サービス。「Web上のアクセスデータを取得し分析する」という意味においては、全て同じなのですが様々なツールを使ってみると、その使い勝手や得意分野は大きく違います。


以前、Markzineの連載でも紹介をしたのですが、主要なレポートはどのツールでも出せます。訪問回数・検索ワード・リファラー・ある程度の導線分析・成果ページの設定のコンバージョンレート算出といった数値は間違いなくみられるでしょう。


多くの会社にとって上記の数値が取得出来れば、サイトの分析は問題無く出来ます。では、それら条件にマッチする数十種類あるツールから自分達にとって最適なツールはどう選べば良いのか?
というのが本記事の内容になります。


機能や計測手法とは別の分類軸を元にツールを選定していく・・・というのがポイントです。初心者向けに作られているのか?レポートの出力が簡単なのか?サポートやコンサルはあるのか?こういった軸でアクセス解析サービスを分類してみました。


注:
1)分けに関しては筆者個人の考えです。複数の項目を満たす場合でも主観を元に「よりこっちの比率が大きい」と思われる方に分けています。
2)全ての項目に全てのツールを分類しているわけではありません。
3)筆者が過去の使用経験(業務及び体験版)のあるツールのみが対象となっています。
4)内容に関してのご意見や間違えがありましたら、ご連絡ください。適宜修正させていただきます。



対象者

初心者向け:Sibulla、ComfyAnalytics、Yahoo!アクセス解析、ユーザーインサイト、うごくひと
中級者向け:GoogleAnalytics、ClickTracks、Visionalist
上級者向け:WebTrends、SiteCatalyst、RTmetrics、SiteTracker、Urchin

分かりやすい名称やレイアウト、定型のレポートが既に作成されている、ヘルプが分かりやすいといった観点で「初心者」に分類をしています。上級者向けは、出せるレポートやカスタマイズ範囲が広いサービスを分類しました。どちらが良いという事はありません。

初めてアクセス解析サービスを使う場合は初心者向けのサービスの方が使いやすい(=難易度が低い)です。しかし自分好みにカスタマイズをして分析をしたい人にとっては初心者向けの物では物足りない可能性があります。


提供形態

無料:GoogleAnalytics、Yahoo!アクセス解析、myRTmobile、なかのひと、うごくひと
有料:上記に該当しないツール(広告表示型除く)

無料と有料はあくまでもサービスを利用するコストが無料か有料かという風に認識をしてください。使いこなすためにかかるコスト・サポートの度合いなど他にかかるコストもあるので、トータルコストで考えてみましょう。

無料サービスに関しては、GoogleAnalyticsが一歩リードしている(機能の豊富さ・利用人数・オンライン上での情報の多さ)のが事実ですね。モバイルサイトへの対応はまだ出来ていませんが、対応は検討しているそうです。現在モバイルの分析を無料でするのであれば、myRTmobileが本命かもしれません。


用途

課題発見:下記以外に今回分類しているツール
広告分析:ADPLAN、ウェブアンテナ、アドプラン、アドエビス
特殊分析:なかのひと、ユーザーインサイト、うごくひと、アクセス解析だけでは分からない、サイト上でのユーザー動向を追うツール8+2種で紹介したツール

課題発見型はサイトへの流入や導線を見ながら、課題を探していくのに適したツールです。なかでもSiteCatalyst,SiteTracker,WebTrendsなどは非常に分析の幅が広いです(その分全体的に難易度も高いですが)。

広告分析は広告特化(あるいはほとんどの分析が広告より)のツールです。広告の分析に関しては、特化している分、課題発見型より分かりやすく機能も全体的に豊富です。

特殊分析は、通常のアクセス解析サービスとは路線が違った、特定の機能に特化したツールです。どこがクリックされたか、どこまで読まれたか、といった他のツールには無い機能を持っています。


コンサルティング

コンサル/トレーニングあり:SiteCatalyst、アドプラン、RTmetrics、Visionalist、WebTrends、GoogleAnalytics
コンサル/トレーニングなし:ClickTracks、Sibulla、Urchin、ユーザーインサイト,Yahoo!アクセス解析、なかのひと、うごくひと

コンサルティングのある・なしです。アクセス解析サービスを導入する時あるいは導入直後に受けるとツール及びサイトの理解があがります。しかし、有料である事と、その質は人に依存するため使ってみないとわからないところが、悩ましい部分ではあります。個人的な印象としてはVisionalist,SiteCatalystはこの辺が充実しているかと思います。


(2009/08/01追加)補足:トレーニング(ツールの仕様の理解や操作説明)とコンサルティング(導入前や後の設計・分析・KPI設定・改善提案など)は別々で考えた方が良いですね。ここではまとめてしまっていますが、トレーニングだけを提供している所もあります。また代理店独自の物もあったりするので、ベンダーが提供していなくても、代理店が提供している事はあるので、確認をしてみてください。


レポーティングのしやすさ

レポーティングしやすい:SiteCatalyst、Sibulla、ComfyAnalytics、ユーザーインサイトVisionalist

定常的なレポートが出しやすいツールをいくつか選んでみました。条件に基づいた定期的レポート配信・解析ページをそのまま印刷してもわかりやすいツール・定型レポート作成機能などを条件に選んでいます。


導入規模

小〜中規模企業向け:Sibulla、ComfyAnalytics、Yahoo!アクセス解析、ClickTracks
大企業向け:SiteCatalyst、WebTrends、RTmetrics、SiteTracker、Visionalist
ハイブリッド:GoogleAnalytics、用途の「特殊分析」に属する物

PVやサイト数が多い・豊富な機能が必要・コンサル等の周辺サービスが充実している=大企業向けとして、分類をしてみました。


※上記で紹介したツールの一覧は、アクセス解析イニシアチブのWikiからご覧いただけます。今回紹介していないツールもあります。



ダブルタギングに関して

様々なツールを分類分けしてきました。ここから1つに絞り込むのは非常に難しいです。そこでオススメしたいのが、「ダブルタギング」です。耳慣れない言葉かと思います。英語で書くと「Double Tagging」。二つ(あるいはそれ以上の)アクセス解析のタグを入れて計測しようという概念です*1


個人的にも非常にオススメしたいダブルタギング。一番のメリットは「使う人のレベルや要件(定常レポートを出すのか、細かい分析をするのか)に応じて、使うツールを選択出来る」という事です。万能なツールはありません。「ユーザー単位の分析をしたい」「いつも見るデータだけをすぐに見たい」「上司に提出するレポートを簡単に作りたい」「どこが良くクリックされているかを知りたい」「とにかく数値の精度が高いデータを出したい」。使う人によってそれぞれ要件が違い、最適なツールも違います。


それを1つのツールで全て賄うのは非常に難しいです。そこで、複数ツールを入れることによって、使う人の満足度を上げたり、作業工数を下げたりする事が出来ます。上記のような状態を実現するために、ダブルタギングを行う際のポイントや注意事項を以下に記載いたします。

ダブルタギングのポイントや注意事項

1)似ていないツールを選びましょう

良い例:「Visionalist+なかのひと」
悪い例:「SiteCatalyst+WebTrends」

全く同じような機能や難易度をもつをツールを選んでも意味がありません。「詳細分析+レポーティング」「課題発見+広告分析」「課題発見+特殊分析」といった切り口で似ていないツール同士を選びましょう。

2)まずは「有料+無料」をオススメします

良い例:「RTMetrics+GoogleAnalytics」

有料ツールを2つ入れるのは、相当説得力が必要なので大変かと思います。「まずは無料ツールを入れてみて、無料ツールで満たせないところを有料ツールで満たす」あるいは「有料ツールを入れて、バックアップで無料ツールを入れる」どちらかのパターンが定番です。

3)利用目的に応じて主と従を決めましょう

良い例:「SiteTracker(主)+ユーザーインサイト(従)」

自分のサイトで何を分析したいか?によって、普段使うツールと特殊な用途で使うツールという風にわけておくといいでしょう。今回の例ですと通常の分析はSiteTrackerで行っておき、地域やユーザーの情報を定期的に見るためにユーザーインサイトを使うといった形です。また社内教育やサポート度合いも主を中心に行いましょう。両方をちゃんとサポートするのはコスト的も厳しいケースが多いです。

4)計測方式やタイミングが違うツールを選びましょう

良い例:「ClickTracks(ログ型)+ComfyAnalytics(タグ型)」
良い例:「Urchin(非リアルタイム)+Yahoo!アクセス解析(リアルタイム)」

今回の分類では紹介しませんでしたが、計測や集計タイミングが違うツール同士を組み合わせるのも一つの手法です。特に「ログ型+タグ型」は取得出来るデータやレポートが異なる部分が多く、片方だけでは見たい物を全て見られない可能性もあります。


補足:2つのツールの数値を比較する事に意味はありません

ツールによって、データの取得方式や定義が違うため、数値は絶対にずれます。どちらのツールの数字が正しい?と問う事に意味はありません*2アクセス解析は実数を見るより変化を見ることが大切です。それぞれのツールの癖を理解しておく事は大切ですが、数値の差を気にしすぎないようにしましょう。


まとめ

この記事を書いた背景を一行でまとめると機能比較だけではなく、利用目的とその得られやすさから、最適なアクセス解析サービスを選んで欲しいという事に尽きます。


最近いろいろなアクセス解析サービスを使わせていただいて思うのは、同じアクセス解析サービスというジャンルでも、その使い勝手や目指している方向性は大きく違うという事です。高機能だから、レポートやグラフがわかりやすいから、といった視点だけでツールを選択しないようにしましょう。


大切なのは、「誰が何の目的のためにアクセス解析サービスを使うか?そのために必要な条件は?」を考えるという事です。ダブルタギングのところで書いたように、それは一つのツールでは満たせない可能性もあります。本記事やオンライン・オフラインで得られるツールのレビューや感想を元に、あなたの会社あるいはあなた自身にぴったりな、アクセス解析サービス(service あるいは services)を見つけてくださいな。


機能比較表だけでは最適なアクセス解析サービスは選べません。

参考記事

makitani.com:アクセス解析ツールは2つ入れよう
個人サイトでも二つのアクセス解析ツールを導入する意味があるよ!という内容と、オススメの二つ目のツールとして「Clicky」を紹介されています。

*1:検索してもあまり出てこないのでもしかしたら、造語なのかな?

*2:それぞれのツールの定義に基づいて、それぞれ「正しく」データを取得しています