散布図を使ったアクセス分析

久しぶりに分析手法を紹介してみようと思います。散布図を使ってアクセス解析のデータを元に散布図を作り、新しい気づきを見つけるという内容です。説明だけではわかりづらいと思いますので、この記事で具体的に手順と、それによって見られる情報を紹介します。

1)変数と軸を決定する

ここでは、一番イメージしやすい、「検索ワード」を変数とし、軸を「新規」と「直帰」とします。
(他の例に関しては最後に紹介いたします)

これを使うことにより、キーワードの属性を4つに分けて、それらをどうSEOSEMに活かすかという結論を導き出します。

2)変数とそれぞれの軸のデータを作成する

つまり・・・


検索ワード×新規(ワードごとの流入数と、そのワードで始めたサイトに来た回数)


検索ワード×直帰(ワードごとの流入数と、そのワードで入ってきて1ページだけみて離脱した回数)

という二つのデータをアクセス解析ツールから取得し、エクセルに落とします。
※データは全てサンプルです。

一部無料ツールを除く、アクセス解析ツールであればこれら数字はすぐに出してくれると思います。
ツールによっては、「検索ワードと訪問回数のクロス集計」あるいは「検索ワードと閲覧ページ数のクロス集計」を行い「1回目」と「1ページ目」の項目だけを取得する必要があるかもしれません。

3)新規と直帰を率に直す

検索ワード×新規率

検索ワード×直帰率

そしてそれら二つを一つの表にまとめます。

エクセル上で全て計算出来るかと思います。ツールによっては、新規率と直帰率の表で、検索ワードの並び順がちゃんとソートされていない場合もあるかもしれません。*1その際にはVLOOKUP関数を使ってこの表を作ってください。

なお、アクセス解析ツール上で計算指標を入れたり、列を追加出来る場合は、2)〜3)のステップは全てアクセス解析ツール上で行えます。その場合は、結果の表をダウンロードしてください。

4)散布図を作成する

エクセルのグラフ機能を使って散布図を作成する。
・この時点で流入数が少ないワードに関しては、対策を打ってもインパクトが少ないので削除してしまった方が散布図が見やすい+改善幅が大きいです。今回は流入が10件未満をここで削除します。

散布図の作り方はExcelの使い方なのでいったん省きます。記事の最後で、エクセルをダウンロード出来るようにしておきますので、作り方に関してはそちらをご覧の上、ご活用ください。

5)4象限に分けて、それぞれのエリアの意味を理解する。


それぞれの4つの象限の属性を見てみましょう。

黒背景:新規率低い(=リピーターが多い) かつ 直帰率が高い
青背景:新規率低い(=リピーターが多い) かつ 直帰率が低い
緑背景:新規率高い(=新規を連れてきている) かつ 直帰率が高い
赤背景:新規率高い(=新規を連れてきている) かつ 直帰率が低い

という風に分けることが出来ます。


ここから分析を進めるのですが、サイトの属性を把握しておくことが大切です。このケースの場合気をつけないといけないのは「このサイトの目的は1ページ目で達せられるのか?(つまり直帰でも良いのか?)」という事です。仮にこのサイトでは2ページ目以降に進んでもらえないと、サイトでのコンバージョンが行えないとしましょう*2

この情報を踏まえた上で分析をします。

黒背景:新規率低い(=リピーターが多い) かつ 直帰率が高い(ワード:firefox、訪問回数、直帰率SEO、リスティング

言えること:リピーターはこれらのワードでの情報を欲しているが、サイト内に適切な情報が無いためすぐに直帰してしまっている。

対策:ワードに合致したコンテンツを作成し、直帰率を下げることを目標とする。

注意:サイトに関連しないワードのコンテンツを作ることはオススメしません。例えばアクセス解析系のサイトで「firefox」に関連するコンテンツばっかり作ってしまうのは、本末転倒だったりします。実際に試してみると、サイトと全く関係ないワードがこの黒背景の部分に属しているケースがありますので、判断が必要になるかと思います。


緑背景:新規率高い(=新規を連れてきている) かつ 直帰率が高い(ワード:アドオン)

言えること:サイトのユーザーニーズとコンテンツがあっていない事例

対策:ワードがサイトにとって重要なワードであれば、コンテンツを作成し、直帰率を下げることを目指す。しかしたいていの場合はサイトに関係にないワードだったりするので、特に対策を行う必要がない。ただし、リスティング等でこれらワードを買っていた場合は非常に効率が悪いので辞める事をオススメします。

注意:一番悩ましいエリアです。サイトに関係ないワードは思い切って無視してしまうのが良いでしょう。直帰率を下げられるのであれば、新規ユーザーを連れてきて(なおかつユーザーがすぐに離脱せずサイトに価値を感じてくれるので)対策を行う必要があれば行いましょう。


赤背景:新規率高い(=新規を連れてきている) かつ 直帰率が低い(ワード:uid)

言えること:新規のユーザーを増やすのに最適なワード

対策:これらワードで流入してきた人が、どれくらい定着するのか(=リピーターになってくれるのか)を調べてみましょう。1回は連れてくるけど、それ以上来訪が期待出来ないワードに関しては、そのワードに関するコンテンツを充実させるか、あるいは逆に割り切ってしないかの判断をする必要がありそうです。

注意:新規の人を集めるキャンペーンとかで使えるワードが眠っているかもしれません。しかし最終的には1回だけではなく、複数回来てもらう必要があるため、取り扱いには注意です。


青背景:新規率低い(=リピーターが多い) かつ 直帰率が低い(ワード:アクセス解析、セッション数、リピート率)

言えること:ユーザーニーズとサイトコンテンツが合っているワード。ブランドワードであったり、そのサイトのウリあるいはメインの情報である事が多い。

対策:これらのワードの流入を増やすことにより、更にリピーターが獲得出来るため、積極的なコンテンツ作成と集客を行っていく。

注意:サイトによってはブランドワード(サイト名やサービスそのもの)が入ってくることが多いです。この場合は更に離脱率や新規率を下げる動きをするというのは難しいかと思います。流入数を増やすことを意識しましょう。基本的にはワードはこのエリアに持ってくること=改善と考えても良いかと思います。


4象限をどこで切るかは、サイトの特性によります。サイト全体の平均直帰率と新規率で見ても良いかもしれませんし、まんべんなくワードがちらばるところで切っても良いかもしれません。

応用

これら情報を月ごとに時系列で見ていくことによって、ワードの配置がどう変わっていくのか?をモニタリングする事も非常に有用です。特に何かワードを元に打ち手を行うのであれば、その結果をちゃんと補足すると良いでしょう。更に細かく軸を分けていくのであれば、有料ワードと無料ワードで分けて分析を行いましょう。「お金」がかかっている有料ワードに関しては特に早い対策が必要でしょうし、無料ワードもSEO対策の効果と今後のうち手を考えるヒントになります。


今回は、検索ワードを新規と直帰で見てきましたが、もちろんコンバージョンレートも視野にいれる事は非常に重要です。コンバージョン率を直帰の代わりに設定してみるのも良いかと思います*3。もちろん他にも変数あるいは軸として様々な項目がつけます。


やってみる価値があると思われる項目は「リンク元URL」「集客の種類」「訪問回数」「コンバージョン率」「曜日」「時間帯」「滞在時間」「閲覧ページ数」あたりでしょうか。いろいろ試してみると良いでしょう。

ダウンロード

今回の表とグラフを作るのに使ったエクセルを以下からダウンロード出来ます。
必要に応じていろいろいじってみたり、散布図作成の参考にしてみてください。

xls版(Office2003以前対応)
xlsx版(Office2007対応)

*1:つまり単純に直帰率の列をコピーして、新規率の列の横に置くことが出来ないという事です。

*2:ECサイトや申し込み・会員登録系サイトの場合このパターンが多いです。ブログあるいはWikipediaなどは逆に直帰しても良いサイトの例になります

*3:新規の代わりにしないのは、直帰とコンバージョン率は反比例の関係になりがちなので、散布図の点を繋げると、一本の線になりやすく分析する意味があまり無いからです