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アクセス解析ツールの教育に大切なこと

基本

メインの業務ではないのですが、社内でアクセス解析ツールの使い方を導入時に教えたり、新人・中途の人への説明を行ったり、年に2回社内の希望者に対してセミナー形式でアクセス解析ツールの使い方を教えたりしています。その中で、「いかにアクセス解析ツールを使って貰うか」に関していろいろ考える機会があります。まだ、自分の中でもこれから書く事が全て実現出来ているわけではないですが、こういう風になりたいという思いも含めて、アクセス解析ツールの教育に大切なことを書いてみます。


1)使う人のレベルと目的を把握する(=使う人のレベルは一定ではない)

背景

当たり前の事ですが、忘れがちです。
説明している相手の能力を知らないと、算数を教えないといけない生徒に数学を教えたり、また数学の教授にピタゴラスの公式を教えてしまう事になります。


ここで書いている「レベル」には様々な物があります。

・その人のアクセス解析ツールの経験レベル
自分でサイトを運営していてアクセス解析ツールを入れてばりばり使っている人
他社での運用経験あり
全く初めてでPV・訪問回数・UU数の違いが分からない
そもそもネット関連の業務経験が皆無
など、過去の経験は本当に様々です*1


・計測に関わるIT技術の理解
導入の説明でなければそれほど意識する必要はないですが、以下の用語を理解しているか・していないかで説明の仕方は変わってくると思います。
HTML
JavaScript
リファラ
SEO
SEM
リダイレクト
UID(端末識別番号)
GETパラメータ(クエリーストリング)
コンバージョン
ROI
CPA/CPC
セッション
PV・訪問回数・訪問者数


・数学的素養
あるに超したことはない知識です。出ている数字、あるいは出したい数字がどういう計算の元出ているか?を理解出来ている方が、理解は早く、ただ出ている数字を見ているだけではなく自分で新しい指標を考えたり、計測ではなく分析が出来る可能性が高くなります。

対応

相手のレベルを事前に(あるいは説明の早い段階で)把握しておく。
いくつか定番の質問を用意しておくと良いでしょう。
「今までにアクセス解析の経験は?」
「(もし「はい」なら)どういう数字を見ていた?」
「PCあるいはモバイルサイトの作成経験は?」
「サイトのどういう所を分析していきたいか?」


その上で、その人に適した説明(また可能ならマニュアル)を用意する。ある程度レベルが高い人は、他のツールとの違いであったり、専門的な用語をどんどん使っても良いかと思いますが、初心者向けには「例え」を駆使して説明する事をオススメします。後は図示する事も大切です。技術的な背景はわからなくても、アクセス解析ツールを利用・活用する事は充分に可能です。分からない人は本当に驚くくらい分からないものですよ。


また、目的を把握せずにツールの説明だけを行っていませんか?自分が説明するだけではなく、対話を行っていかない限りはアクセス解析ツールは使われないのでは?と思っています。説明出来たことに満足をせず、ちゃんと相手の疑問に答えられたか?を説明の評価とする事が大切かなと自戒もこめて非常に強く感じます。


2)機能から説明しない。目的から機能を説明する。

背景

使う側は、まず何か目的があってアクセス解析を利用するわけであって、説明する側もその思考順に則った説明をする必要があります。なので、これはツールを提供しているベンダーや代理店のマニュアルや説明にもよく見られるのですが、機能紹介に説明の重点を置いた内容はあまり使い物になりません。アクセス解析上級者なら機能から利用目的を推測出来るのですが、初めて使ったり経験が少ない人には無理です。

今回の項目で一番大切な内容ですので、具体例を元に説明してみます。

対応

「検索ワード」という機能は、検索エンジンで検索をしてサイトに入ってきた人が、どういった単語を入れて検索したのかがわかる機能です。

という説明は単なる機能紹介です。
アクセス解析初心者は、その機能を見て「なるほど。うちのサイトに入ってくる人はこういうワードが多いんだな〜」と思って終了です。

では、以下の文章だったらどうでしょうか?

「検索ワード」という機能は、検索エンジンで検索をしてサイトに入ってきた人が、どういった単語を入れて検索したのかが分かる機能です。人気があるワードを把握して、自分のサイトのブランド力を確かめたり、そのワードにあったコンテンツを用意する事によってサイトの滞在時間やコンバージョン率が上がるかも知れません。

少し良くなりましたね。でも、これでも全然不十分です。
「機能を使ってどういう事が出来るか?という内容が足りないから」という訳ではなく、そもそも使う側はそういった使い方をする事が少ないし、ピンと来ないからです。


アクセス解析ツールを利用する人が知りたいようなことは以下のような内容です。

・サイトに入ってくる人たちの属性や興味を知りたい。
・その上で、どういう人たちが商品をより購入しやすいのかを把握したい。
・自分たちが打ったメルマガやキャンペーンの効果測定をしたい。
・サイト内のどこで人が多く離脱しているかを知りたい。
・少ないお金で効率的にリスティング(あるいは集客)をしたい。
・新規のユーザーを増やしたいが、どうやったら集められるのか?
 (少なくとも新規の人の特徴を知りたい)
・何度もサイトに訪れて欲しい
・とにかくUUを増やしたい!売上も増やしたい!


といった類の物がほとんどです。こういう思いを持っている人たちに「検索ワード」の機能とその使い方を説明しても上記の質問の答えには全くなっていません。もちろん全ての機能を説明し、そこから賢い人ならどうやって上記の答えあるいはヒントを出せばよいのかがわかるかも知れませんが、初心者あるいは経験が少ない人にとっては非常に難しいです。


なので、アクセス解析ツールのマニュアルとは、本来以下のような形であるべきなのです。

Q.サイトに流入してくる人の属性を知りたい

A.「検索ワード」を使って、流入してくる人の興味とその結果を見てみましょう。

「検索ワード」:サイトに入ってくる人が、どういう興味あるいは期待を持って入ってきているかわかります。この流入ワードを「訪問回数」「閲覧ページ数」「進入ページ」「コンバージョン」などを掛け合わすことにより、より詳細にユーザーのサイトへの期待とその結果・属性などが分かります。

(以下、手法の説明)

この後、いろいろ続くのですが、それは次の項目にて。


良いマニュアルとは「目次には行いたいことが並んでいる」物であり「機能が並んでいる」物ではありません。しかしアクセス解析ツールでこのようなマニュアルはほとんど見たことがありません。教育する側は改めて使う側の意識を持って、マニュアルを作ったり、用意する事を考えて貰えればと思います(もちろん自分も含む)


この行いたいことを考えるのは、実は非常に難しい作業だったりします。なので教える側は自分だけで考えるべきではなく、使う側・使いたい側と接していく中でヒアリングしたり、問いかけてみることが重要です。使う側が持っている要件は、意外に多彩かつアバウトですよ。物によってはアクセス解析では出来ない物もあったり、推測もいっぱい必要な物があります。今まで言われた、このようなケースの例としては


・同業他社とUUの比較をしたい
・サイトの作成料を押さえてROIが良いページにしたい
・20代の女性をターゲットにしているので、これらの属性の人を集めたい
・利用者のサイトへの興味度合いを把握したい
・サイトを見ている人の興味が知りたい
・コンバージョンに一番効く導線を太くしたい
・コンバージョンに何が一番効いたかを知りたい

といった物がありました。なかなか、簡単に答えられる内容ではないと思います。


重要なのは機能を説明するのではなく、目的に適した機能を紹介する事です。ほとんどの場合、目的を達成するためには一つの機能では不十分なので、機能単位の説明があまり意味を成さない事、ご理解いただけるかと思います。意味がないから不必要か?というとそういう事ではなく、時と場合によっては説明が必要だろうし、少なくともマニュアルの巻末にはレファレンスや定義の観点から用意しておくべきです。ただしアクセス解析の教育や説明という観点から見ると、機能の説明はさほど重要ではありません。

3)百聞は一見に如かず。習うより慣れろ。

背景

アクセス解析の説明をしたとしても、初めての人は3割も理解出来れば良い方です。

ほとんどの人は説明の内容は分かっても、その意味や意義、また自分が抱えている疑問の解決(前項で出てきた目的が達成出来るが否か)はわからずじまいに終わるケースがほとんどです。その理解率をどうあげていけば良いか?それが本項目と次項目の内容です。

対応

説明だけではなくデモを見せたり、ユーザーに説明をしながら操作をして貰いましょう。この時に出来るだけ、機能の本来の用途であったり、ユーザーの疑問を聞き出したり感じ取ったりする事が大切です。特にアクセス解析の説明は難解な単語も多く、とかく眠くなりがちです。私自身も過去のセミナーで多くの脱落者を出してしまっています(反省)。なるべく興味を持って貰うための工夫は必要ですね。大切なのは参加者は「聞く」という立場ではなく、文字の通り「参加」して貰うという立場になって貰うことが大切です*2


ある程度、時間が割けるのであれば、課題を行って貰うのが効果的です。私が新人に対して研修で行ってきたのは、うちの会社の複数あるサイトのうちどれかを選択し、そのサイトの課題と解決案を考えるという物です。課題には通常4日間与えられ、1日の終わりに(あるいは必要に応じて随時)ヒアリングを行います。その研修プログラムは以下の通りです。

1日目AM:サイトの選択とアクセス解析の操作方法・機能及びその機能の目的の説明
1日目PM:サイトの閲覧。サイトの特徴と目的を理解して貰う。必要に応じてサイト担当者
へのヒアリング
2日目AM:定性的・定量的情報を使ってサイトの課題を見つけられる限り探してみる。
2日目PM:その日の最後に見つけた課題を報告して貰い、協議の上、1つあるいは2つにしぼる。
3日目AM:その課題に対しての解決案及び、改善したらアクセス解析上、どの数字が変わるかを考えて貰う。
3日目PM:解決案検討及び資料作成開始。
4日目AM:資料作成
4日目PM:私とサイト担当者に向けて発表

上記の研修を行う上で気をつけていることは以下の通りです。

・最初の説明時では機能説明とは別に「目的に応じて使う機能が記されたマニュアル」を渡しています。2日目AMの定量的情報を使ったサイト課題把握は、そのマニュアルに沿って機能を一通り使って貰っています(このマニュアルの概要に関しては次回の記事で紹介)。

・2日目PMは今までの経験を元に、解決案が考えやすそう・アクセス解析ツールの中だけで有る程度完結出来そうな物を気にして選んでいます。

ツールや機能の質問に関しては随時答えていく。また悩んでいそうだったら、こっちから声をかけて進捗を確認すると共に、悩みを聞きヒントを出す(次にここを見てみるといいかもよ?とかこういう視点もあるよというアドバイス)

・発表の内容は通常パワーポイント10枚前後。発見した課題とその解決方法を、ログデータやサイトのスクリーンショットなどを使い、文字少なめ・情報多めで作ってもらいます。また発表の内容は15分程度です。

・発表の後は「気づきを褒める」「他に見るべき情報があればその説明」「解決に向けて具体的に自分だったらどう動くかを考えて貰う」「(既にサイト担当者はその課題に直面している事が多いので)現在、何故その課題が解決されていないかの説明」を行います。質疑応答含め、こちらも15分の時間を取っています。


この研修を行うと、記事の最初に出てきた「1)使う人のレベルを把握する(=使う人のレベルは一定ではない)」というのが非常によく分かります。ぜひアクセス解析の教育担当者は新人研修や教育プログラムに取り込んでみてはいかがでしょうか?


ちなみに中途で入ってくる方に関しては、ここまでの研修を行わず、数時間の説明及び紹介で終わらせている場合が多いです(特にその人にとっての主業務がアクセス解析担当者ではなく、数字を見るだけの場合ですが)


4)実績=事例がモチベーションを上げ浸透を進める

背景

いくらアクセス解析を使っても、結果が出ないのであればモチベーションが上がりません。「説明も分かったし、機能も目的も理解しました。確かに便利そうだけど、自分の席に戻ったときにまず何をすれば良いのかわからない。」「数字の見方も分かったし、いくつか見てみて気づきもあった。でもそこからサイトをどう改善すれば良いかわからない。」といった意見は良く聞くし、目の当たりにしてきています。


ここでこの課題をそのままにしておくと、モチベーションが上がらなくなったり、定常的に数字をウォッチするためだけにツールを使うという事態になってしまいます。これではツールの真価は発揮出来ないし、使っている側も真価を発揮出来ません。これを変えるために必要なのが実績と事例なのです。

対応

実績や事例を集めるための仕組みと、それをマニュアルに取り込んだり、自分の知見として蓄えるという行動が必要となります。これは非常に大変で、今まで出てきた4つの項目の中では一番難易度が高いです。私自身もまだ満足行くレベルには出来ていません。


ここで言う実績とは
「Aというサイトで、●●という事に困っていました。アクセス解析ツールで×と▲という機能を見て現状を分析。その上で■という施策を行ったら、★という数字が大幅に改善。売上も大幅にアップしました。考えたポイントは〜中略〜であり、成功した要因は〜中略〜という点にありました。」


といった内容の物です。

サイト目的に対して使うべき機能を説明する時に、こういった事例のある/なしはモチベーションに大きな差を与えます。もちろん全ての事例が全てのサイトに当てはまるわけではないですが、そのエッセンスであったり、一部でも利用出来る可能性はあります。だからこそ、単なる実績だけではなく、成功の要因や、考えたポイント等も書いてあるとなお良いです。


また、こういった事例のアップデートや追加も必要です。
非常に難しく、根気がいる作業です。しかし、こういった事例やポイントを持っている人は非常に重宝されますし、日本のアクセス解析業界において少ない優秀なコンサルタントになるために一番大切な事なのでは?と感じています。

まとめ

1)使う人のレベルと目的を把握する(=使う人のレベルは一定ではない)
  いくつかの質問からその人のレベルを把握し、そのレベルにあった説明を行う。

2)機能から説明しない。目的から機能を説明する。
  目的があっての機能。使い方を理解して貰うのではなく、課題への答えやヒントの知り方を理解してもらう。

3)百聞は一見に如かず。習うより慣れろ。
  使って分かることはとっても多いが、説明して分かって貰える事は非常に少ない。

4)実績=事例がモチベーションを上げ浸透を進める
  事例は事実。成功体験が次の成功への源泉となり、その泉が流れることが浸透へと繋がる。


これら4つを全て網羅したマニュアルや説明が出来れば完璧!



といっても、非常に難しいです。自分自身もまだまだ出来ていません。
でも、それに向かって行くことは非常に重要だし、すぐに出来ることもいくつかあると思いますので、参考になるところがもしあったとしたら、ぜひ活用してみてください。


さて次回はアクセス解析説明の場で使っているプレゼンテクニックや気をつけているポイントを書いてみようと思います。数日後にアップいたしますね。

*1:ちなみに、自分のサイトやブログで見るアクセス解析と企業で見るアクセス解析はかなり見る視点が違います。

*2:この辺の手法や過去の経験は次回の記事にて