サイト滞在時間はやみくもに増やせば良い物ではない


企業サイトの滞在時間はこう伸ばす--タイプ別施策を解説
まずは非常に良い記事なのでご覧ください。滞在時間に関して書こうと思っていたことの7割くらい書かれてしまいました(笑)


その上で自分なりの補足&追加を以下に書いてみます。

「PV増えればいい」という時代は終わっている

最近強く思っているのは、サイトの価値はPVよりは滞在時間の方がまだましだという事。数年まではPVでも良かったものの今は


「サイトの作り方が変わってきた(FLASHや動画等、PVが無くてもサイトの商品やサービスを理解する事が出来る)」


「利用者のサイトの使い方が変わってきた(RSSリーダーウィジェット、情報まとめ系サイトなど、実際のサイトにアクセスしなくてもサイトの商品やサービスを理解する事が出来る)」


検索エンジンの精度やクローリングが増えることによって昔はTOPから流入が多かった物の(サイトのコンテンツや特性によっては)横入りしてくるケースが増え、コンバージョンまでに必要なPV数が減った」


などがあり、PV数を増やすこと、あるいは多いことがサイトにとって良いとは限らなくなってきたのです。またシステム的な観点からもPV数が増えればそれだけサーバーへの負荷が増えるので、PV増加=売上増加に繋がらない場合は、会社全体で考えるとPV数を増やすことはかえって損する可能性もあります。このシステム的な観点は意外とコストという観点から抜ける場合も多いので、ご注意を。


それじゃサイトの滞在時間を増やせば良いのか?

サイトの滞在時間が増えるという事は、よりそれだけ自社の製品を見せる機会があり、認知・ブランディング・成果への誘導がしやすくなります。そのため少しでもサイトの滞在時間を増やすことが良いように思えます。


PVと違い、滞在時間は有限であるという事がとっても大きなポイントになります。PV数は増やそうと思えば、それこそ一つの記事を読ませるのに、6分割してコンテンツを読ませれば6PVあっという間に稼げます。しかし記事を読む時間を延ばすことは簡単にはできません。また、ユーザーは自分のサイトを見る以外にも、テレビを見たり、同業他社のサイトを見たり、本を読んだり、ゲームをしたりします。オフラインのメディア含め、時間は取り合いなのです。会社で時々言われるのが「アイボールシェア」という単語です*1。直訳すると「目玉の比率」。意訳すると「ユーザーが見る時間の何割を獲得しているか?」という内容になります。オンラインのみならず、テレビ・吊り広告等含め、どれくらいユーザーの目に止まるかは非常に大切な要素です。


じゃぁWeb上ではサイト内の滞在時間を増やせば、このアイボールシェアが増やせるのか?というと半分正解で、半分不正解です。


滞在時間の中身が大切。ユーザー的には短い方が良い。

アイボールシェアの獲得はどうやら大切そうだぞという話をしました。確かにそうです。しかし、一概にそうとも言えないのが悩ましい所なのです。例えばサイトに長期間、滞在をしているものの、その理由が「インターフェースが悪くて目的の物がどこにあるかわからず、サイト内のあっちこっちを探している」だとしたらどうでしょう。


確かに、そのセッションにおいては滞在時間は増えています。しかし、その人が感じているのは不安であり不満です。もしかしたらもう二度とサイトに来なくなってしまうかもしれません。そうすると結果的に、その人の滞在時間(訪問回数×閲覧時間)は、訪問回数が減ることによって減ってしまいます。


またユーザーの視点から考えると、サイトに長くいることは決して目的ではありません。読み物的なサイトを除けば、ユーザーにとって「いかに簡単に『短い時間』及び少ないクリックで目的を達成出来るか」はサイトの満足度に影響を与えてきます。もちろん動画系サイトであったり、掲示板のような読むことを主目的としたサイトの場合はこのケースに当たらないのでご注意ください。


滞在時間を増やすだけでは良くない。「ユーザーにとっての価値がある滞在時間、『満足時間』を増やすことが大切なのです。


滞在時間は計測するのがもっとも難しい指標の一つ

現在のアクセス解析ツールで滞在時間はどのように計っているかというと、

セッションの滞在時間=サイト内の最後のページが開かれた時間−サイト内の最初のページが開かれた時間

※補足
 セッションが最初から最後まで繋がっていることが条件
 「ページ」に限らず他のアクションも計測出来るようにしておけば(例えばファイルのダウンロード)最初・最後に行われたアクションの時間が計算対象となる

こんな方法で計算されています。しかし、ぱっと見ただけでもいくつか気になるところがあると思います。


・最初のページだけ見て離脱した場合はどうなるの?
 →そのセッションの滞在時間は計測されない、あるいはアクセス解析ツール側の最小単位(例えば「30秒以内」)としてカウントされる。


・最後のページを10分見てブラウザを閉じたとしてもそれは考慮されない?
 →はい、考慮されません。


・タブとかで複数のページを開いていたとき、実際に見ているのは別のページだけど、ページは開いているから時間としてはカウントされている?
 →はい、されています。


RSSリーダーなどでページのコンテンツを読んでいる場合は計測されないの?
 →はい、されません。


・Aというページを開き10秒でブラウザを閉じて、10分後にBというページを見て、また10秒で閉じた場合は滞在時間は20秒?
 →いえ、10分以上になります。


といった感じで「ちゃんとページを見て読んでいたか」というのは、まぁ当然分からないにしても、正確にサイト内のページを開いていた時間もちゃんと取れない、精度は低い指標です。じゃぁ滞在時間は使えないのか?というと、そんな事はありません。滞在時間の数字そのものを盲信する事は良くありませんが、時系列あるいはページ・サイト単位での比較には活用出来るかと思います。この比較に関してはPVより精度が高く出来るかと思います*2。ただ多くのツールがページやサイトの平均滞在時間は出してくれますが、分布を出してくれないのが悩ましいところです。平均を見る意味はほとんどなく、分布をページの目的と想定滞在時間と比較する事が大切なの絵dす。


滞在時間をより精度高く取るためには、まだまだ工夫が必要ですし(特にブラウザ側の協力が必要になります)課題は残っています。しかし、まだメジャーなツールではないですが、ページをどこまでスクロールしたか?とか、最後の離脱も含め滞在時間をカウントしてくれるといった物も出てきてはいますので、これからの技術向上に期待です。


最後に

サイト滞在時間という考え方は非常に重要ですが、実用化するには二つの壁というか難しさがあり、一つは「その滞在にユーザーは満足しているかが計れない」という点と、もう一つは「精度高く滞在時間(厳密に言うと閲覧時間)を計れない」という物です。この2点は完全に解決する事は出来ない物の、改善に向かえば今後より滞在時間というのは、重要になってくるのではないでしょうか?広告効果をCPCではなく「CPM(Cost Per Minute)*3」で計ったり、競合他社との評価も視聴率と似たような数字*4で計ったり、オフラインとオンラインあわせたユーザーリーチなども取得出来るような時代が来るのかもしれません。


計算するのは難しい物の、以前書いた「「エンゲージメント」をアクセスログから計るための7つの変数と公式」などは前述した「満足時間」に近い指標だと思います。難易度が高い記事ですが、興味ある方はぜひ概要だけでも見てみてくださいな。また今回は書いていませんが、サイトの滞在時間というより、サイトにどれくらい長く接してくれているかという「Life Time Value(サイトとの総接触期間)」という概念もあり、これもいずれ紹介したいと思います。



※最初の記事にトラックバックされていた方のブログも紹介。

Web 24/7

「メガメディア」以外のもう少し規模の小さな企業ページにとっては、
ホームページで出来る事の充実とアクセスアップを両方やってこそ
滞在時間を延ばす方策が生きてくるのではないでしょうか。
インターネット上のサービスって「人が人を集める」的な部分があるので、
良質なサービスで評価を得てユーザを増やしたり、
色々なところで露出を図ってアクセスを少しでも上げたりする工夫が大事かな、と。


知らないうちにCFOになっていた男のビジネス日記

インターネットメディアは、即効性が期待されてしまうところではありますが、距離と時間の概念をなくすインタラクティブメディアであることからも「インタラクティブ性」へのシフトということが「滞在時間」という軸で評価されているみたいな感じ。

*1:検索してみたところあまりヒットしないのでまだ使われている単語ではないのかも

*2:PVに関しては先ほどの記事を6分割するという話に代表されるように、サイトやページの内容に依存する要素が滞在時間より大きいためです

*3:たった今思いついた指標で、サイトに1分滞在させるのにかかったコストです

*4:もちろん既にVRIなどが発表している「ネット視聴率」という数字はありますが