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アクセス解析がダメな7つの理由(後半)

アクセス解析がダメな7つの理由(前半)」の続きです

What Web Analytics is Missing... という英文の記事を意訳+私個人の視点を加えながら、アクセス解析に欠けているものを紹介しています。前回は7項目のうち2項目を紹介しました。*1というわけで、今回は残りの5つを紹介します。


3)ツールはサイトを理解してくれない

アクセス解析ツールはサイトでの行動を見せてはくれるが、サイトの中身に関しては教えてくれない。ツール自身がサイトをクロールできないだろうか?Googleクローラーのようにサイトの情報を収集し相互リンク等を見てランキングしたり、メタタグやタイトルタグ(できればサイト内の文章も)読み取って自動的にグルーピングするような機能はないのか?


サイトを作る側としては、何を強調すれば(≠どのページを見せれば)、サイト内のコンバージョンが増えたり減ったりするかを知りたがっている。それはサイト内でどういう順番でユーザーにどういう情報を見せればコンバージョンしてくれるのか?ということに近い。


今だと「AとBというページを見た人はコンバージョンが高い!何故そうなのか?共通項を探してみよう」というページを軸に自ら分析する形になるが、これは手間がかかるし精度も下がる。サイトの構造やコンテンツの中身まで把握することによって、「このキーワードとこのキーワードを、こういったタイミングで見せることによってコンバージョンが上がる」とか「実際のサイトの構造ではなく、ユーザーの利用結果によるサイト構造(サイトTOPがあって、その下に一覧があってという構造ではなく、ユーザーの遷移や動きを基にしたサイト構造)とコンバージョンを見る」といった視点でサイトを分析・改善できるのではないだろうか。


そしてもちろん、サイトによってはユーザーが自分の意見を商品に対して書いたり、掲示板を使ったり、5段階評価したり、タグ付けしたりしている。(「はてな」でいえばはてブのコメントとか)そういった内容も読み取ってコンバージョンにどういう影響があるのかというのを知りたい。コメントが書いてある・書いていないをわかるツールはあるが、その有無を知ったところでほとんど何もわからない。


今までの文章の中でも書いてきたが、クリックの結果ではなく、ユーザーがサイト内で何を見て、それに対してどういう反応をしたかというのが重要だ。どのリンクをクリックしたのか?ではなく、何を見ているのか、読んでいるのかを知りたい。今もツールによってはユーザーがページのどこまでスクロールしたのか、ページの滞在時間分布を出してくれるものもある。これを前述の、コンテンツを自動的にタグ付けしてくれる機能と合わせれば、ユーザーが何を読んだのか、わかるのではないのだろうか。静的なページに関してはすぐにでも実現できそうだが、ユーザーカスタマイズされたもの(iGoogleとか)や動的なページに関してはまだ難しいだろう。ちなみに滞在時間を見るのも一つの方法だが、滞在している=読んでいるとは限らない。


ユーザーはサイトに対してクリック以外の情報を多くの残している。それらをもっと有効活用できないものなのだろうか?それこそが、ツールがサイトを理解する事の第一歩だろう。


4)ツールはビジネスを理解してくれない

アクセス解析ツールはサイトを、まぁ、ただのサイト考えている。サイトがブログであろうと、ECサイトであろうと、社内向けのサイトであろうと、クライアント向けの管理ページであっても出てくるレポートや見せ方は一緒。売っているのが日用品でも、嗜好品でも出てくるレポートの種類や指標は同じ。使う人がアクセス解析ツールのルールにあわせるのではなく、アクセス解析があわせてくれないのだろうか?1週間の単位は必ず日曜日〜土曜日で見ているわけではない。毎週の更新が水曜日12時であれば、一週間は水曜日12時〜はじまるべきだが、それをかなえてくれるツールはあるのだろうか。商品入れ替えのサイクルやリニューアルのタイミングという切り口で分析をしたいのに、ツールにあわせるしかないのが現状だ。


商品によっては商品が売れた後にユーザーがどう動いているか?というのが大事なケースもある。電化製品やソフトウェアなどはそうだろう。買った後にどれくらいの人が「ヘルプを見ているのか」「最新のファームウェアをダウンロードしているのか」。購入までの訪問・導線を分析してくれるツールは数多くあるが、購入後のユーザーの行動という視点をデータを出せるツールは見たことがない。


これらを全部やろうとしようと途方もないことになってしまう。サイトごとにカスタマイズしたツールを作らなくてはいけなくなる。その道に進むことは得策ではないし、会社が傾いてしまうかもしれない。業界ごと、サイト体系ごとにいくつかのパターンを用意するのはどうだろうか。あるいは、ユーザーがカスタマイズしてもいい一部分を開放し、導入時にそれを一緒に考えて設定してしまえばどうだろうか?それができれば、もっとアクセス解析ツールが使われるのではないだろうか?「導入してみたけど使い方がわからない/使えない」という話はよく聞くがなぜだろうか?ここにも大きな一因があるのでは。ビジネスにあったツールが提供できないということは、それだけ手間が増えるし、使えないツールの烙印を押されてしまう。ビジネスにあわせてツールが変わっていく。何故ユーザーが苦労しないといけないのだろうか。


「そんなこと不可能だ。みんなのビジネスが違いすぎる。だからこそ分析の専門家がいたり、業界のアナリストがいるのだ。彼らがビジネスを知っていて、うちらがどういう風にビジネスを動かせばいいかなんて言えない。」という意見もアクセス解析ツールベンダーからあるだろう。でも、実際にそんな違うのだろうか?そんなことはないはずだ。たとえばハードウェア業界であれば、同じようなタイミングで同じようなラインアップの商品を出す。売上の曲線や購入後の動きも大きく変わらないだろう。


通販雑誌を持っているサイトであれば、雑誌発売直後にサイトのアクセスが跳ね上がる。雑誌に載っている商品番号検索がその数日はよく利用されるだろうし購買のタイミングもほぼ一緒だろう。こういったことには既にERP業界*2は気づいている。SAPやオラクルでは既にそういった各業界の特徴に対応しようという動きを見せている。基本部分を買ってカスタマイズをいっぱいする事もできるが、ほとんどの会社は業界向けに最低限のカスタマイズが入って商品を購入するところから見ても、こういった「業界ごとにあわせた最低限の変数設定」のニーズがあるのではないかと思われる。


5)サイトの本当の売上を教えてくれない

いまやほとんどのサイトはパブリッシャーである。つまり自分のサイトに広告スペースがあり、広告ビジネスをしているのである。それは実際にサイト内の広告枠を売るということもそうだが、アマゾンのアフィリエイトを貼ったり、YahooやGoogleの検索窓を置くこともそう。しかしアクセス解析ツールはこれから「広告ビジネス」について何も教えてくれない。どういった広告枠をサイトのどこに配置すれば一番クリックされるのか?いろんな広告配信サービスの効果比較や組み合わせの影響はわからないのか?どういった行動をしている人、どういう流入で入ってきた人が広告をクリックし、自分のサイトの売上をあげてくれるのか。サイトの売り上げは商品の売り上げではなく、その他の売上もあわせてサイトの評価なのである。だからこそアクセス解析ツールでその結果を表示し、最適化を手伝ってほしい。


この分野に取り組んできたツールはまだない。果たしてここに取り組むことが、アクセス解析ツールベンダーにとって大きな売り上げに繋がるかわからない。逆にいえば、ソリューションを正しく提供出来れば大きな売り上げを見込める場所ではないだろうか。ユーザー自身がニーズに気づいてない可能性があるが、それを気付かせる事が出来れば大きな前進がそこには待っているであろう。


6)アクセス解析ツールはサイトだけしか見ていない

サイトの情報発信はサイトだけはない。多くのサイトはRSSフィードをしていたり、企業によってはブログツールを作っていたりするだろう。他のサイトとアライアンスを結んでサイトのコンテンツをAPIで使ってもらっているかもしれない。あるいはFTPでデータを渡し提携先がそれを取得しページの表示しているかもしれない。これらの情報は何故入手できないのだろうか?自分のサイトが情報を提供しているところはその内容を知りたいし分析もしたい。多くのツールは「サイト外」になると途端に弱くなる。ブログツールが表示された回数をとり、クリック率をとり、それをサイト内の行動履歴と結び付けてほしい。


他にも(一部のツールは提供しているものの)サイト間の分析が非常に弱い。併用率だけではなく、サイト間のユーザーの動きや利用用途の相関関係が知りたい。サイトは違えど同じ運営会社が運営しているのであれば、その事実を知りたい。サイト外にユーザーがクリックをして出て行った時も、どのリンクをクリックしたか捕捉し、そういった軸あるいは視点から動向を分析すると新しい気付きがあるかもしれない。


また、相変わらず新しい技術への対応は弱い。ビデオやFlashの分析もまだ始まったばかりだし、他のサイトから持ってきた情報を自分のサイト内で表示していても効果補足ができない。Web2.0がログ解析へ与えた影響は「AjaxFlashを使って、ページ遷移しなくなった」という事が重要なのではなく、いろんなサービスや仕組みを組み合わせて、サイトのコンテンツを作ったり利便性をあげられていることにある。サイトを訪れるユーザーは「マッシュアップされた12個のコンテンツ」という事を理解することもなくサイトを使っている。分析する側もそうでありたい。


どう実現するのか?計測タグや最低限の計測情報をツール関係なく共通化できないだろうか?簡単ではないことはわかる。もちろん違うところがいっぱいあってもいい。ただ例え違ってもツール間で変換できるようにすればどうだろうか。いい加減、サイトの全体を知るためにいろいろなソースから情報を集めてくるのはやめたい。いろんな場所にログインして数字を見る。しかもそれらは紐づけられない。改めて書くが、大変なのはわかる。でも、最終的にユーザーはこういったことに時間を使いたいわけではない事は分かってほしい。


サイトはあくまでもビジネスの一部であり、ビジネスの「ネットでの売上や効果」を知りたい=「サイトの売上や効果」を知りたいとは限らないのである。


7)アクセス解析ツールは(連携のため)もっと公開する必要がある

アクセス解析ツールはきまったレポートをただ出すだけではなく、ユーザーが求める情報を取得できるように公開していくべきである。ここでいう「公開」とは他のツールやオフラインコンテンツと連携できるAPIの公開であったり、自由にSQLリクエストを投げられる(例)通常レポートにないような、購入回数が5回以上の人のサイト滞在時間の分布を出す)ようなツールを使えるようにするという意味である。取得したデータに修正を加えられるツールを見たことがないし、ユーザーが好きな情報だけを簡単に出せるツールも非常に限られている。

連携していく、公開していく。今アクセス解析ツールが抱えている多くの問題を解決するためには、こういった姿勢が重要なのではないだろうか。アクセス解析ツール単体で閉じこもっていてはいけない。ユーザーや他のツールが頑張ってアクセス解析ツールにあわせようとする事にも限界がある。使ってもらい、役立ってもらい、ビジネスの中心に使ってもらいたい。そこを目指すのであれば、まだ見せなきゃいけないことは、たくさんあるのではないだろうか。


まとめ

アクセス解析ツールはここに書いたほどダメで救いがないものだろうか?世の中には数百のツールがあり、何万人もの人がそのツールを使って給料を得ている。何十万人もの人がそのツールの結果を見て大きな経営判断を行っており、その結果が何千万人に影響を与えている。どのツールもサイトの情報を教えてくれて、サイトを分析するという概念を与えてくれた。だから、アクセス解析ツールは駄目なものではないし、多くの成果を生んできた。

しかし、ずっと今の方向のままではダメだ。

ログやページという視点でビジネスは動いていないし、分析をしたい訳ではない。ビジネスは人・物/コンテンツ・その見せ方という視点で考えられる。それらがどう相互関係を起こし売上を上げるかだ。これを見たい。サイトでどう人が動き、物を見て、中身を判断しているか。そしてそれらがどう売上に繋がるか。そういう風に考えると、今まで見てきたログの世界が最適でない事がわかるのではないだろうか?見せている多くの数字は本当に必要で見せたい物なのか?


すぐに解決できることではない。今までやってきたことが間違っていたわけでもない。でも、本当に今、進んでいる方向を今後も進んで良いのだろうか?アクセス解析ツールが本当にやりたいことは何か?利用者が求めていることは何か?今まで書いてきた7つの「課題」はそれを改めて答えるために考えないといけない事である。

1)ログは「行動」を教えてくれるが、「行動を起こしている人」については教えてくれない
2)「アクセス解析(あるいはウェブ解析)」は「アクセス(ウェブ)」の比重が高く、「解析」の比重が少ない
(本当のビジュアル化とは今のような「(ひどい)ビジュアル重視」ではなく、シンプルな物だ)
3)ツールはサイトを理解してくれない
4)ツールはビジネスを理解してくれない
5)サイトの本当の売上を教えてくれない
6)アクセス解析ツールはサイトだけしか見ていない
7)アクセス解析ツールは(連携のため)もっと公開する必要がある

私見

元の英文の記事を意訳し、自分の意見を加えてきました。元の記事はこの2倍の長さもあり、ここでは書ききれなかった細かい内容も多いです。大事なところは抽出できたし、自分の考えも元記事の意見と大幅にずれていないため(多少、暴論だなと思う部分はあるが)主要なメッセージは伝わっているかと思います*3アクセス解析ツールって便利なようで、まだ不便なところがとっても多い。ツールにあわせるために、多くの労力とコストが割かれているような気がします。


私自身はアクセス解析ツールの利用者であって、提供している会社に勤めているわけではないので、自らツールを変えていくことは難しいです。ただし、利用しているユーザーと提供している会社が現在抱えている課題や情報をもっと共有していく事によって、少しづつ変わっていくのではないだろうか?と期待しています。改めて基本に帰って考えてみませんか?某有名曲ではありませんが、「BTTB(Back to the Basic=基本に立ち返れ)」は、アクセス解析において大事なことだと改めて感じました。


前回の記事に対して多くのはてなブックマークトラックバックをいただいたことは、それだけ大勢の人が「課題を感じている」か「関心を持っている」ことの現れなのかもしれません。ただツールを作る・利用するだけではなく、改めて何をしたいのか?何を提供したいのか?を考えるきっかけになれば幸いです。

*1:最初は3項目紹介したのですが、「ビジュアル化」に関しては元記事を改めて確認したところ7つの内に含みませんでした。

*2:企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。「企業資源計画」と訳される。これを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェアを「ERPパッケージ」と呼ぶ。代表的なERPパッケージとしては、ドイツSAP社のR/3、PeopleSoft社のPeopleSoft、データベースベンダとして有名なOracle社のOracle Applications、オランダBaan社のBAAN IVなどがある。 IT用語事典より

*3:文章力が無い上に誤字もありそうなので理解しづらいところも多々あるかとは思いますが